■ 遺留分放棄と遺言との組み合わせ |
●相続争いへの対策
亡くなった親の財産をどう分けるかは、子供たち相続人が決めます。「遺産分割協議」です。
もめずに仲良く決まる遺産分割協議が多いのは事実です。
しかし財産相談のプロならば「うちの子供たちに限って」という親の期待を込めた言葉をそのまま信じてはいけません。
それを真に受け、その後に痛い目にあったプロは多いはず。
「そうでしょうね…」とは言いながら性悪説でその子供たちを眺めます。幼い頃のお菓子の取り合いが財産取り合いに進化することに不思議はありません。
「金持ちには子供はいない。相続人がいるだけである。」
…ユダヤの格言です。
●遺言書でもめなくなるか
もめない相続にするには「遺言書」です。これにより遺産分割協議は不要となり、不動産等の名義変更等もできます。「全財産を長男に相続させる」という遺言書があれば、次男の承諾や印鑑は不要なのです。(ただし遺言次第で相続人全員の印鑑証明を求める銀行もあります。)
親は「法定相続分」など気にする必要は、本来はないのです。思った通りの内容にすればいいのです。私有財産の国である日本では自分の財産の行方は自由に遺言で決めていいのです。
法定相続分というものがありますが、遺産分割協議をするときに目安がないと困ります。その目安に過ぎないものです。
だから遺言においては「全財産を長男に」(あるいは「銀座のバーのママに」)と書いていいのです。皆がその遺言で納得すれば、もめない相続です。
次男が納得するようにと次男の心情を思いやって、遺言の最後に附言(法的に意味がない部分)として、何でそうなのかを切々と書き込み次男の納得を得るというテクニックもあります。
●遺留分減殺請求でもめる
しかし次男が納得するとは限りません。次男には法的権利があります。遺留分減殺請求です。「ゼロというのはあまりにひどいではないか」との心情を遺留分減殺請求で果たします。
次男の法定相続分2分の1とします。次男が遺言で得た財産が全体の4分の1(法定相続分の半分…遺留分)以下なら「4分の1に達するまでの財産をよこせ」と当然に長男へ請求できます。
それは長男への名義変更後であっても可能です。裁判を起こす必要もないのですが、実際は裁判になることも多いでしょう。
遺言そのものは遺留分をおかしても有効なものです。誰も遺留分減殺請求をしなければ、そのままです。遺留分減殺請求は、してもしなくてもいいのです。
「自分の財産の行方は遺言で自由に決めていいよ。でもメチャクチャをしないように遺留分の定めをしておいたよ。」というのが民法の趣旨なのでしょう。
もめたくないなら遺留分をおかさない遺言にすることです。
長男の子や妻等を養子にすることで法定相続人を増やし、結果として次男の法定相続分を減らし、次男の遺留分を減らすこともできます。(養子の数について税法上は制限がありますが、民法上では問題ありません。)
●遺留分放棄でもめなくなる
しかし「全財産を長男に」遺言書で絶対にもめないようにするには「遺留分放棄」を次男にしてもらうことです。
親の生存中に「私は相続放棄します」との生前相続放棄書を書いても法的に無効です。しかし「遺留分減殺請求をしません」という「遺留分放棄」は家庭裁判所の許可により有効です。
裁判所は自由な意思か、理由はあるか、財産上の釣り合いはあるかをチェックします。
「結婚を許す代わりに」はダメ。「すでに多額の贈与を受けたから」ならいいのでしょうし、2500万円まで贈与税非課税の相続時精算課税制度が使われます。
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