定期借家の成立過程




定期借家制度の成立と今後 



バードレポート号外第296号2000年3月15日

定期借家制度


旧来の借家制度は問題も多く、良質な借家の供給を阻害していました。だから制度の見直しは必要なものでした。ただしその見直しも、マトモに検討されかつマトモに運用されなければいけません。

また新制度の問題点をあとから指摘するのは簡単です。定期借家を制度化した方々はさぞ大変なご苦労をなさったと思います。拍手を送りたいと思います。まずは新しい制度をつくったのですから。

しかし敢えてもう一度本当にマトモだったのかを振り返ります。

定期借地制度創設となった1991年の借地借家法改正は法制審議会等何重ものチェックを受け、スキのない改正法でした。ところが今回の定期借家制度創設の改正法は議員立法でバタバタと作られた法律です。国会審議で内容が二転三転し何と

「官報」が法律を間違って伝えるという醜態までもさらしました。………(略)………法施行前から法解釈が定まらず議論をよんでいます。趣旨はともかくも、デキの悪い法律であることは間違いありません。しわ寄せを受け、困ることになるのは不動産の現場です。それでも定期借家制度の根幹を定めた大事な法律です。不動産のプロが制度を大切に育てるしかないようです。
』(

バードレポート2000年1月24日289号「デキの悪い法律「定期借家」改正法…期間満了だとどうなる?」)

法律としては、通知なし期間満了時の解釈が問題になっています。わずかな条文数なのに定期借家として一番大切な期間満了について解釈上の問題を残したのは「大チョンボ」です。また立法者による解釈が正しければ貸主による制度悪用も可能です(週刊住宅3月9日号「悪徳家主の二大悪用法」林弘明氏)。

そして特に居住系での運用上の問題は仲介業者を介して契約時の貸主説明義務をいかに果たすか、また期間満了再契約時の実務をどうするのかでしょう。

定期借家制度の成立過程


そもそもの法律改正のスタートはどうだったのでしょう。

(定期借家制度は)法曹界等を中心に反対意見も多いようですが、昨年11月の政府緊急景気対策の柱のひとつになっています。緊急景気対策全体の経済拡大効果60兆円の内で、この定期借家権の導入による効果がなんと16兆円を占めています。社会制度上の是非はともかく、反対意見を抑えてでも、自民党は法改正をせざるを得ないでしょう。』(

バードレポート1998年1月5日182号「今年のテーマは「容積率売買」そして「定期借家権」」)

国民の居住関係の基礎を定める法律が住宅政策としてでなく経済対策からスタートしました。

不動産建設業界はこぞって「定期借家制度導入熱烈推進」です。異議を唱えようものなら「石を投げられ、業界から追われる」といった程の状況です。』(

バードレポート1998年11月16日第232号「こんな定期借家ならいらない・・・改正法の実務」)」

定期借家制度や改正法に疑問を投げかける法学者は、マスコミ上で、声高の推進派の学者から、まるで罪人が吊るし上げられるかのように扱われました。そして議論することさえ避ける風潮になってゆきました。

「借地借家法」改正案は衆議院法務委員会で審議予定でしたが取下げとなりました。そして「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」という法案の中で「借地借家法を改正する」という条項を設け国会提出され建設委員会で審議される見込みとなりました。

賃貸住宅の法的権利関係の根本を定める法律が法務委員会でなく建設委員会で審議されます。その方が早く法案成立できるのでしょう。まあ、日本の住宅政策とは国民のためでなく、景気対策のため・建設業界のためのものなのですから、これが当然なのかもしれませんがね…
』(

バードレポート1999年8月9日第267号「定期借家制度創設のための法案がやっと国会審議へ」)

こうして建設委員会で審議がなされ法律は成立しました。

これ程までに無理と苦労を重ね作った法律です。マトモならよかったのですが、なんで大チョンボの法律しか作れなかったのでしょうか。建設省もかわいそうです。議員立法でデキの悪い法律を勝手に作られてしまって、その尻拭いを今後ずっとしなくてはいけないのですから。

国会で参考人として発言し、また借地借家での著作の多い澤野順彦弁護士著「Q&A定期借家の実務と理論」が住宅新報社から2月25日出版されました(1800円)。そのはしがきに次の記述があります。

この法律は、国民の権利や生活に重要な関連を有する立法としては、従来の立法過程と趣を異にし、十分に議論されず、また、国民に周知されないまま議員立法という形で成立したもので、法解釈上も、また、わが国の住宅・福祉政策の面からみても非常に多くの問題を抱えた法律である。この法律の運用により、今後多くの法的、経済的問題が発生すると思われるが、十分な準備もないまま、公布から3ヶ月も経ない平成12年3月1日から施行されることになっている。

この本の視点は建設省公式見解と違います。そして定期借家をビジネスにする方には必読の書です。

今後の運用


立法過程の是非はともかくも、せっかく新しい制度ができたのです。不動産の現場が大切に育て運用していかなくてはいけません。

子供の通学や引越の面倒等を考慮すれば、何かの事情で再契約不可となって2年後退去との可能性の残る契約は不安です。同じ物件で、従来型借家と定期借家とでは明らかに従来型借家の方が「確実にずっと住み続けられる」という点から価値が高いものです。消費者への理解が浸透すれば、比較の上で定期借家の家賃は下がって当然です。』(

バードレポート2000年2月21日第292号「定期借家制度で賃貸市場と家賃はどう変わるのか…」)

価値が低いものを、その説明もせず以前の高い金額で売りつける行為は、通常の世の中では商道徳に反する行為です。しかしアパートのオーナーさんだけがお客様で賃借人はそうではないと考えている向きの業者さんにとってそれは当然な行為となるかもしれません。

当社と親しい賃貸管理会社は3月以降すでに新築アパート・既存アパートで何本もの定期借家契約を賃借人と結んでいます。(住宅新報3月10日号「定期借家こそ普通契約」アートアベニュー・藤沢雅義氏)その会社では将来の再契約の可能性を含め、極めて誠実に賃借人に説明を行っています。

しかし世の中は誠実な会社や貸主ばかりではありません。それにいくら誠実に説明しようとも、賃借人側には知識がありません。

説明不足によるトラブルも生じるでしょう。特に2年経過後の再契約時が心配です。

定期借家制度は4年後見直しとなっています。せっかくできた定期借家制度ですが、運用とトラブルの状況によってはプラスへの見直しではなく、マイナス方向への見直しにもなります。

不動産・賃貸管理業界の力量


アメリカには「公正住宅法」があり、入居者を年齢・人種・性・子供の有無等で差別することは禁止されており、連邦住宅都市開発局にその仲裁委員会まで設置されています。この制度の存在が前提で定期借家制度が運用されているのです。日本では「そんな差別禁止制度が必要なら、現行の借家制度のままでいい」という大家さんは多いでしょう。

日本での弱者保護は「公営住宅斡旋」で解決するそうですが一体どうなるのでしょう。
』(

バードレポート1998年11月16日第232号「こんな定期借家ならいらない・・改正法の実務」)

定期借家制度は、政治家や学者の手を離れて、不動産のプロによる実際の運用に委ねられました。

どのように制度を育てるか・ダメにするか、不動産業界・賃貸管理業界の力量と見識が世の中から試されることになります。


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