定期借地と相続税




定期借地の相続税の実際・・・保証金債務と底地物納 



バードレポート第299号2000年4月10日

定期借地で相続税はどうなる



1995年4月に、ある地主さんが50年一般定期借地権による土地活用を行いました。

約40坪の相続税評価額は更地評価で2000万円です。保証金は50年間無利息500万円でした。

そしてこの地主さんはこの年の12月に亡くなりました。


さて相続税はどうなるでしょうか。国税庁の定めに基づいて評価をすることになります。

定期借地権が設定された土地の評価は、当時の通達では更地の80%とされ、2000万円×80%=1600万円です。

預かった保証金500万円はそのまま預金になっていましたので預金として当然500万円です。

保証金とは将来の返済義務ですから借入金同様に債務です。保証金は額面▲500万円ですが、50年後に▲500万円を返済すればいいからと▲27万円だとされます。現在27万円あれば年6%で運用して50年後には500万円になります。だから債務額は▲500万円ではなくて、▲27万円だけだという理屈です。

債務額を少なくされるとはマイナスが減ることであり、相続税が増えることです。

何もしなければ更地評価2000万円だけで済んだのが、定期借地で土地活用をしたばっかりに、土地1600万円+預金500万円+保証金債務▲27万円=2073万円へと増加してしまいました。

96年9月にこの内容で相続税の申告書を提出しました。

定期借地底地の物納


そして相続税申告と同時に定期借地権を設定した土地について物納申請を行いました。

国税局物納担当及び財務局による2度の現地立会いを経て98年12月に相続税の評価額の1600万円で物納許可を受けました。

ただし国税局の物納担当より「契約条項を直せ」「保証金を清算しろ」「保証金がなくなるのだから地代を値上げしろ」と指示をされ、借地人さんには保証金500万円を返還し、地代値上げもしました。なかなか大変でした。

保証金の債務控除


保証金債務が額面▲500万円にもかかわらず▲27万円しか控除できないのは納得できません。

500万円を借地人さんに返済したのは、物納のための国税局指示です。返済額が27万円で済むならこの27万円も納得できますが実際には500万円なのです。

50年間確実に年6%運用できればともかくも、低金利下ですし、借地人さんからはいつでも解約自由な契約内容で、借地人さんから解約申し出があれば500万円を返す義務があります。

また保証金が無利息だからこそ地代が安くなっているのです。500万円への利息は言わば地代のようなものなのです。だとすれば▲27万円と▲500万円の差額473万円は将来受取る予定の地代です。差額473万円は受取れるかもしれないというだけの全く不確実な将来の利益に相続税をかけられたということです。


申告から1年間は減額請求ができます。保証金債務につき▲27万円でなく▲500万円だとの減額請求を97年9月に税務署へしました。97年12月に却下。98年1月に税務署へ異議申し立て。98年7月に却下。98年8月に国税不服審判所に審査請求。延々と審理が続き2000年1月に却下。国は定期借地にとても厳しい!!

その後の改正


定期借地設定地の評価はその後多少引き下げられ、また「6%」は「4.5%」に改められました。(バードレポート219号・269号)

現行では定期借地を設定した場合の相続税はこの事例程ひどくはありませんが、やはり厳しい状況です。また評価が下って物納収納額も下がっています。

定期借地そのものは相続税対策には向きません。地代収入を得るのが目的ならよいのですが、相続税対策としてなら、よく考えなくてはいけません。

定期借地設定地の物納は可能ですが、住宅メーカー主導の定期借地契約内容ではそのままでは物納不可です。「物納ができますから」と営業されていますが、十分な注意が必要です。


資料…国税不服審判所の裁決書

定借論壇「悩む相続税対策」住宅新報1995.8.18.状況は現在も同じです.

第299号-別紙2000年4月10日

平成4年の定期借地権制度創設


農地の宅地並課税、路線価引き上げ・固定資産税評価額の引上げ。地主さん苦難の時代の到来です。

地主さんがアパートを建築しても、その建築が地主さんの本当の「目的」とは限りません。「相続対策」が「目的」であり、「建築」は単なる「手段」だったりします。

地主さん自身も気付いていないその相続対策という「目的」を明らかにしてさしあげ、その「目的」を達成させてあげれば、その結果として「手段」たる不動産が動きます。

平成4年の改正借地借家法が施行は、地主さん苦難の時代を狙って施行されたとしか思えないほどの絶妙なタイミングでした。そして、相続コンサルと定期借地権推進が結びつくことは当然の成り行きです。そして、このあたりから私の悩みが始まりました。

固定資産税対策を兼ねた土地活用が「目的」であれば定期借地権は「手段」として光り輝きます。しかし、相続税対策を絶対の「目的」として、そこに定期借地権を「手段」として立ち向かわせようとすると、苦しさで頭の奥がうずきだします。

相続税対策は節税と納税とに分かれます。節税とは評価額を引き下げ税を減らすこと、納税は発生する税額をスムーズに納税できるように財産の組替え整理することです。

節税に定期借地権を活かそうとすると絶壁から落ちるような絶望感を感じます。定期借地権の設定された土地の評価額が高すぎ、かつ保証金の債務控除について圧縮計算するからです。なにしろ定期借地権設定により相続税が増大することすらもある程です。

節税ではなく納税に定期借地権を使おうとすると、絶望こそしませんが、生ぬるいビールを炎天下で飲む気分です。

保証金で相続税の納税はできますが、土地値の2割程では帯に短し・・・。物納するなら保証金を返済しろといわれます。債務控除では圧縮計算して相続税を多く取られるのに、その保証金について額面満額返済しろというのでは不合理不条理です。保証金がダメなら権利金と思っても、権利金受領時の所得税額には眼の玉が飛び出ます。

「残す土地」と「あきらめる土地」


相続税対策は「残す土地」と「あきらめる土地」との区分から始まると、私は思います。「あきらめる土地」を物納なり売却なりが可能な状態にならしめ、「残す土地」を相続税から救います。定期借地権設定ではその土地をどちらの区分に入れるかが天下分け目です。

定期借地権の唯一最大のデメリットは「50年間の長期に渡り土地活用が固定され、社会情勢の変化に対応したフレキシブルな対応ができなくなくなること」だと思います。50年固定されるのなら「残す土地」とするしかありません。例外は物納を前提として「あきらめる土地」とすることでしょう。

「残す土地」にするならとことん節税したいものです。しかし土地評価と保証金評価の問題で節税になりません。保証金と地代のキャッシュバリュ−に注目すれば「残す土地でありながらも納税用にも使える便利な土地」ともいえますが、中途半端です。保証金と地代とで相続税を納税するためには所有土地のかなりの部分を定期借地権にしなくてはいけません。すると将来に対するフレキシブルな対応ができません。「あきらめる土地」として物納するのなら保証金返還の問題が出ます。また物納制度がこのまま続くのかとの不安もあります。「あきらめきってしまう土地」ならば生前売却や更地のままという方が説得力があります。

相続対策で定期借地権は四面楚歌。頭が痛くなるのもお分りいただけるでしょう。地主さんの最大の興味は相続税です。定期借地権が相続税対策になるのならば、土地供給は更に一気に進むのですが。

保証金方式と権利金方式


悩みの元凶は保証金の取り扱いです。保証金の課税方式が変わるのか、それとも保証金課税を避けて権利金に進むのか。保証金の性格が議論されているようです。また将来の流通の観点からは保証金より権利金といった議論もあるようです。

今の私にとっての救いは、権利金方式、または権利金保証金いづれもなしの定期借地権です。もちろん一番望ましいのは、税制が現実対応して変わることですが、そうでなければ実務家として現実対応するしかありません。

保証金方式全盛の世の中で、物納でとってもらうために、権利金方式の契約書をつくりながら、「世間様と違うこんなものをつくってしまってバチは当たらないだろうか。」と悩み続ける毎日です。


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