債権者による占有者明渡




債権者はなんでもできる(2)…占有者明渡と稟議書提出拒否 



バードレポート第304号2000年5月15日

抵当権とは何でしょうか。その対象物について所有者が占有をしたままで、すなわち所有者に使用収益をさせたままで、債務が弁済されない場合には優先的に弁済を受けるものです。

だから返済しなければ競売にかけて換金し優先的に弁済を受けるのは当然です。

家賃の差押


しかし家賃はどうでしょう。

銀行は当然のように「抵当権の物上代位による家賃差押」をします。「私は抵当権者です。だから家賃については所有者に払わずに私に払って下さい。」との内容証明を賃借人に送ります。

抵当権は使用収益については所有者に残したもののはずです。家賃受取は使用収益です。考えるとおかしいな?とも思います。

実は抵当権による家賃の差押が当たり前のようにできるようになったのは平成になってからです。それまでは裁判所でも見解が分かれていたところなのです。1989年の最高裁判決により金融機関が家賃差押を始めたのです。つい最近のことなのです。

近年の判決はどんどん債権者有利に変わってきています。

なお賃借人が更に転貸した場合にはどうなるか、については依然として見解が分かれているようです。

明渡し請求


<1999年11月24日最高裁判決>

抵当権はその対象物の占有を所有者に残します。だれが入居するかは所有者の自由にもなります。そのために銀行が競売しようとする直前に悪質な占有者が入り込むこともよくあります。

法律上での建前は次のようになっています。「競落者は明渡しの強制執行により占有者を排除できるから占有者を心配する必要はない。だから競売価格は占有者がいるからといって下がるはずはない。だからたとえ悪質な占有者がいたとしても抵当権者の権利侵害には当たらない、だから抵当権者は占有者を排除できない。」というものです。

しかし現実は建前と違います。恐い占有者がいれば時間とお金が必要になるのが普通。だから競売価格はどんどん下がります。

そこで抵当権者である金融機関が占有者に対しての明渡請求をできるという最高裁判決が1999年11月になされました。この判決そのものは悪質と思われる占有者に対する明渡しですが、正常な賃借人で結果的(短期賃借権の期限切れ)に不法占有となってしまったものも同様との議論がなされています。

この判決により銀行はたとえ競売の申し立て前でも、邪魔になりそうな占有者を法的に立ち退かせるようになるでしょう。


不良債権処理がいまだ日本の国策のためなのか、銀行はどんどん強くなります。

貸付稟議書の提出命令


<1999年11月12日最高裁決定>

バブル期において銀行が株式購入資金6億円を個人に貸付けました。その個人が亡くなり、そのことを知った相続人はさぞ驚いたのでしょう。

その相続人は返済できるはずもない借入金を押し付けられたとして、銀行を相手に貸手責任の損害賠償請求を起しました。しかし、社内決済の承認を得るための書類「稟議書(りんぎしょ)」が銀行側から提出されないので立証ができません。

そこで「貸付稟議書・本部許可書」についての裁判所から銀行に対しての文書提出命令をだすようにと相続人が求めました。

しかし、銀行の貸出稟議書は特段の事情がない限りは文書提出命令の対象にならないとの決定を最高裁が行いました。

これまで地裁や高裁レベルの決定では結論が分かれており、公共性からの文書提出命令を認める高裁決定もありました。

しかしこの最高裁決定により、たとえ社会性や貸手責任を問う裁判であっても銀行稟議書の提出を求めることはできないことがはっきりしてしまいました。

銀行は公的資金・低金利ばかりでなく、法律上もどんどん守られていきます。唯一の例外が石原東京都知事のようです。


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