保証金家賃相殺の対抗力




保証金家賃相殺も賃料債権譲渡も金融機関に対抗できず



バードレポート2001年5月14日 第351号

抵当権は目的不動産につき、債務者が使用収益したまま、債権者が他の債権者に優先し債権回収する権利です。その不動産が第三者に売却や賃貸されようとその効力は微動だにしません。

金融機関は「この不動産を換価すれば貸付金を回収できる」と判断し、その物件の処分価格を検討して担保としたはずです。

しかし不動産価格下落で金融機関の目算は外れます。換価しても回収できないなら家賃でもいただこうかと考えるようになりました。それが現在は当然のごとく行われる「抵当権に基づく物上代位としての賃料債権の差押」(以下「賃料差押」)です。

これが争いなく認められるようになったのはつい最近、1989年10月27日最高裁判決からです。昭和の頃には抵当権があるからといって賃料差押ができるかについては論争があったのです。

金融機関にとって物件価格の下落は担保の見込み違いだっただけのはずです。家賃まで考えて担保したのではないでしょう。それを後になって最高裁が「家賃もご自由にどうぞ」と言ってくれたのです。お蔭で金融機関は競売までの間の「行き掛けの駄賃」としての賃料差押を堂々とできるようになったのです。

さて金融機関が賃料差押をするようになったので債務者も知恵を絞ります。更にその絞った知恵に対して最高裁が次々に判断を下します。

賃料債権譲渡に抵当権が勝つ


「家賃を差し押さえられるぐらいならば、たとえ安くても賃料債権の債権譲渡しよう。」

例えば向う2年間に渡って毎月100万円の家賃をテナントから受け取る権利(合計2400万円)を、1200万円に値引きして、まとめて誰かに売ってしまうのです。債務者(つまりビルオーナー)にとっては金融機関に賃料差押されるよりも、たとえ半額になってでも現金で回収した方が得ですから。

これに対して1998年1月30日に最高裁が判断を下しました。

「抵当権設定日が債権譲渡日より前ならば、テナントは差押以降の家賃については債権者に支払わなくてはいけない。」

つまり2年間の家賃を受け取る権利を1200万円で買った買受人は、金融機関の賃料差押により、テナントから家賃を受け取ることができなくなります。

保証金相殺にも抵当権が勝つ


ビルの賃貸借時に、テナントが多額の保証金を差し入れていて、その後にオーナーが破綻し、保証金の返還が難しくなっているケースは数多くあります。

建物賃貸借に伴う保証金はテナントからオーナーに対する貸付金と同じ扱いです。オーナーが破綻すれば回収不能になってしまいます。(敷金は扱いが別)

そのためにテナントは相殺を望みます。上記ケースでテナントが保証金2400万円を差し入れていたならば、毎月家賃100万円を支払う代わりにオーナーへの差入保証金2400万円から100万円を相殺します。(任意の相殺については当レポート1999年2月15日付第244号参照)

テナントにしてみれば家賃との相殺以外に保証金回収は見込めません。うまくいけば24ケ月で保証金すべてを使い切れます。

しかし金融機関が賃料差押をしてきます。テナントは「オーナーとは家賃を保証金相殺する約束になっているから差押には応じません」と言って争います。


この争いに対し2001年3月13日に最高裁は判断を下しました。

「抵当権設定日が保証金差入日より前ならば、差押以降の家賃についての相殺は認められないので、テナントは債権者に毎月100万円の家賃を支払わなくてはいけない。」

テナントは保証金を回収する道を閉ざされ、家賃を金融機関に毎月払うこととなります。

家賃は金融機関の思いのまま


今や抵当権が設定された賃貸物件の家賃は金融機関の思いのままになってしまったようです。

政府ばかりでなく裁判所までも金融機関救済に一生懸命のように見えます。



ビルオーナーの破綻…テナントがする家賃・保証金の相殺

バードレポート1999年2月15日 第244号



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