サブリース保証賃料と最高裁判断




サブリース保証賃料への最高裁判断…三井物産・千倉書房事件



バードレポート2002年10月7日 第418号

平成2年に東京都港区六本木の千倉書房所有の2745平方メートルの土地にサブリース前提のビル建築計画が始動します。平成3年7月にはサブリース事業者による賃貸条件コンペが行われます。

最低賃料保証額月額(以下「賃料」)は日本ランディック・住友不動産・三井物産がいずれも9400万円台で応札。千倉書房は三井物産に絞って交渉し、平成3年10月に両者覚書により最低保証敷金(以下「敷金」)19億円賃料9445万円と定まります。

平成4年4月に物産は敷金17億円賃料7422万円にするよう要望し所有者は受け入れます。平成4年5月にビルは着工します。

平成4年7月以降にも物産は様々な要求を出して交渉を続け、平成5年2月に敷金17億円賃料7428万円期間20年の建物賃貸借契約を締結しました。

平成6年1月に敷金3億円賃料3336万円とし期間を20年から10年に短縮するように要求し千倉書房はこの要求を突っぱねます。

平成6年4月のビル完成引渡を目前にし賃貸借面積を縮小し敷金17億円賃料6916万円とするとともに、平成7年6月までを暫定期間としてこの間は賃料5200万円で敷金当面10億円と定め建物引渡により賃貸借が開始します。暫定期間内に当事者間での新たな合意ができなければ本来の条件に戻るとなっています。

しかし新合意ができないままで暫定期間が経過しますが物産は5200万円の暫定賃料の支払いを続け敷金差額も払いません。

物産は敷金3億円賃料3336万円であること、千倉書房は敷金17億円賃料6916万円であることの確認を求め裁判を起します。

平成14年9月12日に最高裁が決定を下し千倉書房勝利が確定しました。新聞でも大きく報道されたサブリース裁判です。

賃料減額請求をしたのか


この賃貸借契約書には賃料を協議の上で値下げできる条項がありました。また借地借家法には近隣賃料の値下がり等により契約条件の如何にかかわらず賃借人は賃料減額請求ができるという賃料減額請求権が定められておりこれは強行規定です。

物産は契約書にもとづき「賃料改訂協議の申入」をしていますが協議は不成立です。そこで「協議の申入」をしたことは賃料減額請求をしたことであり、当然に家賃は引き下げられた、と請求します。千倉書房は「協議の申入」を受けただけであり家賃減額請求は受けておらず、暫定期間経過により本来の賃料に戻ったと主張します。

高裁と最高裁は千倉書房の言い分を認めました。物産は賃料減額請求をしていないのだから賃料減額はないとしました。

「協議の申入」ではなく「減額請求する」と通知していれば結果は違ったかもしれません。

サブリース保証賃料の裁判


賃料下落で大幅逆ザヤとなり賃料引下げを求めるサブリース裁判が幾つも進行中です。

論点はこのようなサブリース契約であっても賃料減額請求ができるのか、ということです。

建物賃貸借契約ならば「賃料は値下げしない」という契約条項になっていても、賃料減額請求権により賃借人が請求すれば家賃が引き下げられます。裁判所が決めるのは「幾らまで引き下げるべきか」ということだけであり引き下げは当然なのです。

ビル所有者は「このようなサブリース契約の本質は、自ら住むためのアパート賃貸等とは違い、家賃保証というリスクを取って収益を得ようとする事業上の契約であって賃貸借契約ではない。だから借地借家法の適用はないので賃料減額請求権はなく賃料引下げはない」と主張します。


今回の最高裁の判断は大きな注目を集めましたが論点の「賃貸借契約か事業契約か」の判断をしていません。そのためサブリース問題についての結論にはなりません。来年にはこの判断を行う最高裁の判断がでます。実務に大きな影響があります。

なお現在では定期借家制度を活用すれば賃料減額請求権を排除することができます。



サブリース保証賃料でも賃料減額請求可との最高裁判決


サブリース保証賃料でも賃料減額請求可との最高裁判決

バードレポート第469号2003年10月27日

住友不動産は旺文社関連会社のセンチュリータワー(東京都文京区)にサブリースによる土地活用を提案します。センチュリータワーは住友不動産からの敷金50億円と銀行借入180億円とでビルを建築し住友不動産に平成3年賃貸します。契約期間は15年で中途解約不可。家賃は年20億円で3年ごと10%値上げ、値上げ率は協議で変更可ですが、値下げの定めはありません。

オフィス賃料市場はガタガタになり、住友不動産は借地借家法32条1項に基づく賃料減額請求をします。これは経済情勢が変ったなら契約条件にかかわらず賃料減額請求できるという強行規定。賃貸借契約書に値下げの定めがないのでこの強行規定による減額請求です。平成6年4月には14億円へ、同11月には9億円へ、平成9年3月には8億円へ、平成11年3月には5億円へと、それぞれ減額請求を続けます。これが裁判となりこの10月21日に最高裁の判断がなされました。

サブリース契約と賃貸借契約


ポイントは「サブリース契約であっても借地借家法32条の賃料減額請求ができるのか?」。

建物賃貸借契約ならば「賃料は値下げせず」との定めでも賃料減額請求が当然にできます。

そこで「このようなサブリース契約の本質は、自ら住むためのアパート賃貸等とは違い、家賃保証というリスクを取って収益を得ようとする事業上の契約であって賃貸借契約ではない。だから借地借家法の適用はないので賃料減額請求権はなく賃料引下げはない」と議論されます。

最高裁は、たとえサブリース契約であっても、それが建物賃貸借契約である限りは、借地借家法32条1項の賃料減額請求が可能だと判断しました。ただし家賃をどこまで引き下げるかについては、借入金返済事情その他様々な事情を考慮しなくてはいけないと判じました。


具体的な賃料については高裁に差し戻され判断がなされます。

この10月21日には同趣旨の最高裁判決がもう一件でています。やはり住友不動産が借主で当初賃料年間18億円の賃貸ビルについてで、全く同じ結論の判決です。こちらの契約書には「いかなる場合も直近一年の賃料を下回らない」という明確に家賃値下げ不可との定めがありましたが、それでも結論は同じです。

相手が個人地主でも同じ結論


この二件の最高裁判決は新聞にも載り注目を浴びましたが、その2日後の10月23日に最高裁で別の判決がでています。

前二件の判決はいわば大企業間の争いでしたが、こちらは個人地主対大企業です。判決は個人の地主であっても、同じ結論になりました。

東京都目黒区の個人地主が三井不動産との共同事業でビルを建築します。借地人借家人立退きや隣接地買収まで含む三井不動産主導による共同事業だったようで、地主は金利年6%10年固定で11億円の融資を受けることにまでして事業をすすめます。

ここでのサブリース契約は個人地主が取得したビルの区分所有部分を三井不動産が平成7年3月から10年間を月1064万円保証で借り上げるというものです。


地主は940万円までの値下げなら認めるとの妥協案をだしますがそれ以上は応じません。

三井不動産は平成7年11月に家賃を509万円へとの賃料減額請求を行います。ただし減額請求の後も平成14年までずっと月940万円を支払い続けます(地主の資金繰りを考慮したのか?)。

そして裁判。地主側は賃料減額請求は認められないとして1064万円の家賃の確認を求め、三井不動産は減額請求後の509万円だとし、過払い金額の返還を求めます。

最高裁の判断は前二件と全く同じ。解約不可のサブリース契約であっても賃料減額請求は可能、ただし減額後の賃料決定には様々な事情を考慮しろとして、差し戻しです。個人地主だからといっても同じ結論です。

現在では定期借家契約活用で賃料減額請求を排除できます。




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