遺言や不動産取引と認知症




遺言や不動産取引や相続税対策…認知症になったらもう遅い



2007年8月20日 第653号

公正証書遺言の無効


銀行員の証言では、平成11年に、80歳のAさんが信託銀行に電話をして遺言をつくりたいと言った。銀行員は自宅を訪問して多くの不動産について、相続人4人にどう配分したいかを聞き取り、メモにして公証人に遺言作成を依頼した。そして公証人と再訪して遺言書原稿を見せながら確認し、遺言内容を読み聞かせ、本人が自署して本人が実印を押した、とあります。

この遺言での取得財産が少なかった相続人から遺言無効の訴えがなされ、裁判所はこの遺言を無効とする判決を下します。

判決では、遺言作成2年前から本人は認知症が進行しており、すでに自分の年齢も、年月日も、自分の子供の数も分からず、嫁と孫の区別がつかず、これらの状況に照らせば、多数の不動産を4人の子に区別して分けて、遺言執行人についても項目ごとに区分して2名に分け、そのうち一人の執行人である信託銀行の報酬を決めることなどできないはず。遺言能力はなかったから遺言無効という判決です。(横浜地裁 平成18年7月21日)

このケースでの経緯は、平成8年にこの信託銀行が公正証書遺言を作成、翌年に執行人を税理とするの公正証書遺言が作成され、その更に次がこの遺言です。様々な争いがあったのでしょう。

遺言を依頼する相続人側とすれば、信託銀行と公証人が受託するなら多少の認知症でも大丈夫だろう、と思ったのでしょう。

認知症が進んでからでは遺言は遅いのです。無効になります。

なお遺言無効の裁判例は数多く、遺言者の生活状態・精神状態・担当医の診断・遺言の難易度・遺言作成時の状況等から遺言能力の有無を判断しています。


相続税対策のための成年後見


相続税対策としての土地処分やアパート建築があります。

これも認知症が進んでからでは困難です。法的な無能力者と不動産取引をする人はいません。

法律行為ができない相手と取引しても後で無効とされかねませんから。それなら成年後見制度で後見人をたてることです。後見人ならば財産処分についての代理権があり、取引相手のリスクはなくなります。しかし…。


家庭裁判所はBさんの成年後見人にその甥を指名しました。しかしこの甥は26回にわたり管理財産から計1800万円を横領し自分の借金返済に充当します。家庭裁判所は後任の成年後見人を選任し、家庭裁判所長が甥を刑事告発します。親族から窃盗した場合には本人からの告訴が必要との定めがありますがこのケースではそれは適用されずに業務上横領罪として懲役2年の実刑です。(仙台高裁秋田支部 平成19年1月16日)

相続税対策とは誰のために行うものでしょうか。税金が少なくなるのは相続人です。本人のためでなく相続人のためなのです。そんな相続税対策のために家庭裁判所が後見人を選任し監督してまでも不動産取引をさせる必要はないのではないか…少なくとも裁判所はそう考えます。

生計維持のための不動産処分が必要なのであればともかくも、気を許せばこの「甥」の事例に発展しかねませんから裁判所は慎重であり、相続税対策のための後見人選任は厳しいようです。

つまり認知症が進んでからでは不動産取引を伴う相続税対策もできないのです。


税務調査も本人意思能力


税務署も難関です。

相続開始直前になんらかの相続税対策がなされたのならば、税務調査においてはそれが本人の意思かを厳しく問われます。

本人の意思能力なしで相続税対策商品を購入したとされれば、それは本人ではなく相続人の行為だとして否認されます。

認知症等が進んでからの遺言や相続税対策は極めてリスキーなのです。やるのなら元気なうちに。また、相続や不動産や税金のプロが敢えてそのリスキーさに挑戦するのなら覚悟が必要です。前述の銀行員や公証人は針のむしろだったはずです。

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