営業譲渡と株主総会運営




カネボウ再生に学ぶ…営業譲渡の使い方と株主総会運営



2008年3月24日 第682号

企業再生の手法として営業譲渡は便利です。別会社を設立し元会社から営業譲渡をします。元会社はこの営業譲渡の対価を銀行等債権者に返済し抜け殻になり清算されます。銀行は残債を貸倒償却できます。

これは「第二会社方式」と呼ばれる再生スキームです。

ポイントは「営業譲渡の対価をいくらにするか」。返済原資なので債権者側は高くしたい、別会社側は安くしたい…。不動産価格とちがい、営業譲渡の適正な対価ははっきりしません。

営業譲渡を認めずに破産させたときの債権者の回収額より幾ら多くなるか、が実務です。

カネボウの破たん処理


カネボウは2005年6月に上場廃止です。産業再生機構はファンド連合にカネボウ株式(全体の70%)を売却します。上場していましたから、個人等一般株主10万人が残っていました。

「カネボウ」商標と化粧品事業は花王に営業譲渡し、カネボウには日用品・食品・薬品の3事業が残ります。ファンドの戦略は3事業を再上場させての利益確保のようです。しかし利益を独占するために邪魔なのが一般株主でした。これ排除します。

ファンドは3事業を400億円程でファンド配下の別会社「クラシエ」に営業譲渡してし、カネボウを抜け殻にします。

さてカネボウの取締役はファンドから派遣です。これら取締役はカネボウやカネボウ株主の利益のために営業譲渡したのか、ファンドの利益のためなのか…。カネボウのためなら「高くしろ」と交渉して当然。それをしないなら「特別背任じゃないの?」

あとは抜け殻カネボウを清算すれば終わりです。先立って「1株162円で買い取ります」とTOB(株式公開買付)を始めます。一般株主を一掃するためです。

400億円で営業譲渡したから162円です。もし倍の800億円なら162円はもっと高くなります。一般株主には何で400億円なのか、具体的説明もありません。

反対株主は会社に株式買取請求できます。多くの株主(筆者を含め)がその道を選びました。

株価はいくらが適正なのか。会社側は162円を主張します。一方1600円近くを主張する株主もいます。裁判所に判断が委ねられ、東京地裁は3月14日に360円とする決定を行いました。

裁判長の決めた1株360円は鑑定員の鑑定とおりです。その鑑定書では400億円で営業譲渡した3事業の価値は800億円とされました。800億円のものをファンド別会社に400億円に移すことで、ファンドは一般株主から収奪したことになります。


TOBに応じた株主は360円の価値のある株式を162円でファンドに売らされたことになります。

なお株価鑑定はDCF法(収益還元)です。割引率の設定次第で結果は大きく変わります。株主側会社側とも高裁へ抗告します。

欲の皮が突っ張った株主?


一般大衆は「欲の皮を突っ張らした個人株主たち」と見ます。

しかし株主総会でのある女性個人株主の発言…「この民主主義の中でこんなデタラメがあっていいのか。…お金の問題ではないんです。こんなことが許されていいのですか…。」

最後の株主総会では、取締役への株主質問に取締役は答えず、スタッフ(補佐人)が「…と彼は言っている」と答えます。その彼がそこにいるのに…。何と、それで許されてしまいます。

筆者は毎回の株主総会へ出席を続けましたが、そこは説明責任が全く果たされず、誠意とかモラルは全く無用の世界でした。

それがファンドの生きる道です。


鑑定費用と監査費用


カネボウは監査人から監査を断られます。ある監査法人が一時会計監査人を引受け、わずか27日で監査報告書を提出します。その内容「適正に表示しているか否かについての意見を表明しない」。その監査報酬3700万円。

裁判所が株価の鑑定人を定め、その鑑定報酬は何と5000万円。

適正な企業会計や裁判を進めるためにはお金がかかります。

カネボウ再生に学ぶ…少数株主を押さえ込むための手法2006年4月24日 第590号
カネボウ劇場「ファンド資本主義 VS 一般株主」
「死ぬまでお前らを恨むぞ」…カネボウ最後の株主総会(カネボウ劇場第8話)
誠意やモラルは無用のカネボウ総会・鑑定株価はTOB価格の2倍(カネボウ劇場第7話)
国際金融の常識というけれど…乱用的買収者と実刑判決(スティール&村上編)
カネボウ解散株主総会 特別背任で告発の取締役は何考える?(カネボウ劇場第6話)
株主総会の決闘 ファンド資本主義 VS カネボウ一般株主(カネボウ劇場第5話)
カネボウの営業譲渡禁止仮処分。裁判官と弁護士は。(カネボウ劇場第4話)
 弁護士の始める提案型訴訟ビジネス (カネボウ劇場 場外乱闘編)
映画「ウォール街」とカネボウ「解体と営業譲渡」(カネボウ劇場第3話)
国産ハゲタカファンド VS カネボウの一般個人株主(カネボウ劇場第2話)
「三洋電機とカネボウの正々堂々の脅迫状」(カネボウ劇場第1話)
カネボウ旧経営陣による粉飾決算2000億円(カネボウ劇場予告編)

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