新任意売却制度で後順位抵当権抹消




新しい任意売却制度…裁判所が後順位抵当権を抹消する?



2008年6月9日 第692号

自民党司法制度調査会に「明るい競売プロジェクトチーム」がこの1月に始まり議論を続け、方向性が見えてきました。

5月21日読売新聞には「担保不動産抵当権抹消容易に」、6月3日日経新聞には「担保不動産 迅速処分に」と報じられました。

ポイントは任意売却推進です。

任意売却とは


抵当権者が債務者に対して担保不動産の売却を迫ります。競売にすると値段が下がりますから「今回この不動産の売却に応じてくれたら残債の返済は求めない…」といった条件交渉もあります。これが任意売却です。

競売でなく任意売却にすることは債権者(抵当権者)と債務者(不動産所有権者)の双方にとって有利なことが多いのです。

他の抵当権者がいなければ問題なく売却となります。

問題は他の抵当権者がいるときです。時価1億円土地の第1順位抵当権が2億円、そして次の第2順位に100万円の抵当権があるとどうなるでしょうか。

任意売却するにはすべての抵当権を外してきれいな物件にしなくてはいけません。

第2順位の抵当権者の担保がある限りきれいになりません。それができなければ任意売却は事実上不可能です。

任意売却をすすめるには、この第2順位の抵当権者にハンコ代を払う等で抵当権の抹消をしてもらうしかありません。

本来ならば1億円で売却しても第2順位では配当がないにも、かかわらずです。

更に第2順位の抵当権者が法外なハンコ代を要求することもあります。また信念で抹消には応じない抵当権者もいます。

そして第3順位・第4順位・第5…、と多くの後順位抵当権者がいれば調整は困難になります。

そうすると任意売却をあきらめ競売しかありません。競売ならハンコ代なして後順位の抵当権は吹っ飛びますから。

裁判所関与の任意売却制度


検討されている新制度案のひとつは次のようなものです。

1.任意売却でせっかく買主が現れたのに、このような後順位抵当権者が抹消に応じない場合には、裁判所に対して抵当権の抹消の許可を申し出ます。

2.その、後順位抵当権者が、一定期間内に、自ら競売を申し立てるか、もっと高い価格の買主を連れてこない限り、裁判所は抵当権抹消を許可します。

3.売却代金は裁判所に納付され、すべての抵当権が裁判所により抹消されます。裁判所が売却代金を配当します。


競売ではないものの、売却代金配当と抵当権抹消は競売同様に裁判所が関与します。民間主導の競売制度といえるものです。

非司法競売・民間競売


新しい制度は自民党プロジェクトチーム以前に、法務省の競売制度研究会が時間をかけて検討を続けてきたものです。

この研究会では、当事者が合意すれば売却から配当まで裁判所関与なしで実施し、それを公開オークションも可能とする案までも検討されています。

日弁連は意見書で「非司法競売」として反対を続け、一部では「民間競売」と言われました。

自民党で今回検討される案では裁判所の関与もあります。

さて、従来の競売の三点セット(物件明細書・評価書・現況調査報告書)のようなものは必要か、裁判所による価格鑑定は必要か、予納金はどうなるのか…。詳細はまだ不明です。

議員立法となりそうですから、素早く実現しそうです。日経新聞では「次期国会に法案提出方針」とあり、秋までには臨時国会召集となりそうです。

実現すれば、従来型の競売市場はガクンと縮小するでしょう。

また、債務者と抵当権者が協力すれば、事業再生のための新しいアラワザもでてきそうです。

サブプライム問題の余波で不動産価格は急落し、不動産ファンド会社の破たんも始まっています。新制度に間に合うかは不明ですが、破たん処理事案は急増しそうな気配です。

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