経営承継円滑化法で遺留分




経営承継円滑化法…会社株式の贈与への遺留分の特例法



2008年6月16日 第693号

企業経営者がその会社を後継者に事業承継するにあたっては様々な難題があります。

「後継者をいかに育てるか」という大問題もありますが、相続という大問題もあります。

親が創業した会社があります。長男は会社を継ぎ、後継者になります。親から会社株式すべてを時価1000万円の贈与を受けました(2500万円までなら贈与税非課税の相続時精算課税制度があります。)。親は引退し、長男は死に物狂いで働き、会社は大きく成長し会社株式の時価は10億円にまでなりました。

遺留分の計算の仕方は


さてここで親が亡くなります。相続人は長男と長女です。

会社株式はすでに長男のものですから、相続や遺産分割には関係ないように思えます。

しかし相続分算定に際して過去の贈与財産(一定の条件あり)までも織り込んで計算します。

つまり計算上の相続財産は、実際にのこされた遺産とすでに贈与済み財産(「特別受益」といいます)の合計と考えるのです。この合計額をもとに相続分を決めることになります。


親が残した財産は預金2000万円でした。

そうするとこの合計額は、預金2000万円と、すでに贈与済みの株式(贈与時時価1000万円・現在10億円)の合計になります。

会社株式を贈与時時価1000万円で考えれば合計額3000万円で、長男長女それぞれ1500万円です。

長男はこの1500万円のうち会社株式1000万円を過去の贈与で受領済みなので残額500万円となります。預金2000万円は、長男500万円と長女1500万円に分ければいいのです。

しかし現行民法ではこのような場合に会社株式について贈与時の時価でなく、遺産分割時の時価で考えます。

後継者に厳しい遺留分


つまり1000万円ではなく10億円なのです。するとここでの合計額は10億2000万円(株式時価10億円+預金2000万円)で、長女の相続分は5億1000万円です。

長女が最低でも得ることのできる財産額、つまり遺留分はこの半額です。すなわち2億5500万円が遺留分として、長女に対して守られる財産額です。

預金2000万円全額を長女が全額相続しても、あと2億3500万円です。長女は長男に対して「2億3500万円分の会社株式か現金を下さい」と請求できます。

会社株式を1000万円から10億円に育てたのはまさしく長男の死に物狂いの努力の賜物です。

しかし今の民法では会社経営に関係のない長女に権利が生じてしまいます。それを長男が負担しなくてはいけないのです。

長女に株式が流出し株式分散することで、経営が困難になることもあり、長男の事業意欲も無くなります。それが地域の雇用機会にも影響します。


事業承継への遺留分の特例法


さて2008年5月9日に中小企業経営承継円滑化法という民法の特例法が成立しました。

遺留分の計算について一定の場合には特別の計算をすることが認められます。

贈与を受けた会社株式について遺留分計算の対象から外すことができるようになります。

また外すのではなく遺留分計算でのその株式の価額を相当な一定額(贈与時の1000万円の時価)に固定することもできます。

長男の努力は報われ、また株式分散の不安も消えます。


株式と併せて、会社の工場敷地等で親の土地についても遺留分計算の対象から除外することが可能です(株式のように価額を固定することはできません)。

この新法により事業経営者の相続対策は大きく変わります。

なお対象となるのは特例中小企業とされる非公開会社であり、経済産業大臣の確認を受け、家庭裁判所の許可が必要です。推定相続人(遺留分権者…妻や子等)全員の合意が必要です。

新法は2008年10月施行ですが、遺留分の扱いは2009年以降の施行見込み(未定)です。別途相続税についての特例もできます。





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