遺留分固定の中小企業経営承継円滑化法




資産家を相続破産に追いやる相続税と精算贈与と遺留分固定



2009年4月20日 第733号

資産価格急落時の相続


新日鉄の株価は300円です。10ケ月前は700円でした。

さて財産が新日鉄50万株だけの方が10ケ月前に亡くなりました。相続税の申告納税期限は亡くなってから10ケ月です。


相続税課税は相続時の株価1株700円×50万株で3.5億円です。相続人が子1人として相続税1億円です。現在の新日鉄の株価は300円×50万株で1.5億円です。相続税は何とか払えます。

では50万株でなく300万株としましょう。10ケ月前の株価21億円で、相続税は9.7億円です。現在の株価は9億円です。すべて売却しても納税できません。

土地も同じ。昨年の路線価21億円の土地を相続し、相続税は9.7億円です。今の不動産市況なら、すべて売却しても相続税が払えない土地もあるでしよう。「相続破産」が現実になります。

物納セーフティネットは


前バブル崩壊期には物納というセーフティネットがありました。三井宗家第11代当主、三井八郎右衛門高公氏の相続人は自宅を物納し、住友家第16代当主、住友吉左衛門氏の相続人は住友不動産株式を物納しました。資産家は物納に救われました。

現在も物納制度は存続し、条件を満たせば物納できます。ただし物納の前提としての「金銭納付困難な理由」の条件が厳しくなっています。3人世帯なら基本生活費1ヶ月分は19万円(=10万円+4.5万円×2人)です(別途考慮あり)。それを超える収入は延納による金銭納付に回します。資産家にとってのこの生活費は実質的に破産と同じでしょう。物納は資産家のセーフティネットとはなりません。

相続時精算課税制度


相続人を破産させかねない制度もあります。相続時精算課税制度による贈与です。贈与税率20%で財産を贈与する制度です。

新日鉄は2007年に964円の高値を付けました。ここでは1000円としましょう。300万株なら30億円。贈与を受け、内60万株売却で贈与税6億円を払います。

この贈与は将来の相続時に清算します。将来の相続の時に贈与済み財産(新日鉄300万株)を相続財産に加え相続税を計算します。その相続税額から贈与時に払った贈与税(6億円)を控除します。つまり贈与税は相続税の前払いにしか過ぎないのです。

ただし将来の相続税計算での評価額が注目ポイントです。

評価額が贈与時の評価額で固定されるのです。この場合なら相続税での評価額は1株1000円で固定されるのです。この贈与の考え方は「今なら評価額1000円で将来の相続税を固定できる。今1000円の新日鉄の株価が相続時に5000円に上がっていても、相続税計算では1株1000円で済む。」という考え方です。

相続税評価300万株30億円で固定され相続税は14億円です。そこから納税済み贈与税6億円を差し引き8億円です。しかし株価は下落しました。手元残の株は240万株、一株300円で7億円です。相続税は払えません。

贈与財産が新日鉄でなくとも、土地建物や未上場同族株式でも考え方や結果は同じです。


中小企業経営承継円滑化法


新法「中小企業経営承継円滑化法」は未公開中小企業を相続税と相続争いから救う制度です。

中小企業の後継者が、会社株式をスムーズに承継するために、株式の生前贈与等を受ける制度が盛り込まれています。そして相続後に他の兄弟から遺留分の請求があっても、その株価を贈与時の株価等で固定することで遺留分減殺請求を制約できます。

予定通り株価が上昇すれば、相続時精算課税制度による相続税節税だけでなく、中小企業経営承継円滑化法により遺留分問題回避も大成功でしょう。

しかし遺留分での株価固定は両刃です。不況で株価下落なら後継者は他兄弟からの相場を超える多額の遺留分減殺請求です。

どの制度も資産価格上昇が前提です。値上がりから値下がりへ歯車が逆転すると資産家の相続破産が現実になります。




地価急落でも相続税破産しないための緊急避難…売却換金 2009年1月12日 第720号



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