欠損金繰越控除の税制改正




欠損金繰越控除の税制改正・法人税率引き下げは減益要因



2011年1月17日 第817号

欠損金の繰越控除制度


ある期に5000万円の赤字(欠損金)が生じました。法人税はもちろんゼロです。翌期は1000万円の黒字(利益)でした。前期の赤字5000万円は翌期に繰り越され、うち1000万円を黒字の相殺控除にあて法人税ゼロ。翌々期が1000万円黒字としてもこれも繰り越した赤字で控除します。

企業経営は黒字の時も赤字の時もあります。黒字だけ課税されて赤字が切り捨てられては困ります。つまりこれは当然の仕組みです。従来の税制では赤字(欠損金)は7年間繰り越します。


デベロッパーによる多額の不動産売却損、リーマンショックでのメーカーの大赤字、研究開発型ベンチャーによる多額の先行支出もこの欠損金となります。

時折この当然の仕組みが国等の事情により押し曲げられます。

カルフォルニア州は財政危機のため突然2008-09年での欠損金の繰越をストップしました。

繰越控除は80%まで


日本では2011年度税制改正での法人税率引下げ財源として資本金1億円超の法人について欠損金の繰越控除を制限します。

ある期に5000万円の赤字が生じました。この期の法人税は従来通りゼロです。翌期に1000万円の黒字です。従来は前期赤字のうち1000万円をぶつけて課税ゼロでしたが、改正後では、ぶつけられる赤字は黒字額の80%までとなります。1000万円の黒字には800万円の赤字しかぶつけられません。差額200万円への法人税課税が生じます(2011年4月以降開始の事業年度から)。


税制改正決定前の新聞報道での案は「利益の50%まで」でしたが最終的には80%となり、資本金1億円超の法人が対象となりました。なお従来は7年間繰り越しでしたが9年間に延長です(2008年4月以降終了の事業年度で生じた欠損金から)。

外部出資受け入れで短期間に資本金1億円突破のベンチャー企業も多数あります。最終的に欠損金の全額が控除できるのなら長い目で見て税額は同じです。しかし納税という現金支出により資金繰りへの影響が生じます。

法人税率引き下げで減益に


銀行が貸付金1000万円の貸し倒れ償却をします。償却への税務基準は会計基準より厳しく、もし税務基準を満たさなければ、会計上だけ1000万円の損失計上をして税務では計上しません。

いわゆる「有税償却」です。その後、税務基準を満たした段階で法人税が減少します。

減少額は400万円(1000万円×税率40%)です。公開企業等の税効果会計適用企業はこれを「繰延税金資産」として資産計上します。会計上の貸し倒れとして1000万円損失計上すると同時に、将来減額見込みの税金400万円分を資産として計上します。


また減損会計適用企業が資産評価下落により資産の減損処理1000万円をしたときも同様です。

税務では損失計上(評価損)は原則認められません。会計上で1000万円の損失計上しますが、税務では計上できないので400万円の繰延税金資産が生じます。

この繰延税金資産(税務での繰越欠損金による額も含む)は会計上では資産であり、大企業だと数千億円規模にもなります。

メガバンクは10数年間法人税納税ゼロです。不良債権の償却処理や欠損金繰越控除等をうまく調整活用しているからです。

繰延税金資産とは稼ぎ続け税金を払い続ける前提での、その将来の税金を減額する権利という性格の資産です。将来稼げる見込みがなくなれば資産性は消え資産取り崩しを求められます。

サブプライム問題により米国GMは繰延税金資産約400億ドルの取り崩しを余儀なくされ財務破綻のきっかけとなりました。

日本での法人への税率は40%から35%へと5%引き下げです。すると将来減額できる税金は400万円から350万円になります。

この場合も繰延税金資産の取り崩しです。大企業では百億円単位にもなる利益減少要因です。

法人税率の引き下げにより利益や自己資本が減ります。



注…この改正は2012年4月1日以後に開始する事業年度について適用されることに変更になりました。

cats_back.gif





バードレポートとは


 
clip_blue_1.gif




前号

次号


関連する項目
相続税対策申告
譲渡税買換特例
住宅税制住宅減税
税制改正

このレポートと同じ年分リスト
2011年リスト




あんしん生命資料請求
  • 使わなかったら払った保険料が全額戻ってくる医療保険

保険ショップインフォ
  • 地域から探す
  • 保険ショップの使い倒し方

保険ショップ


バードレポート

Google
Web検索
当サイト検索

バードレポート項目別
不動産ビジネス手法
不動産賃貸経営
不動産と金融会計
定期借地権定期借家
不動産証券化
債務整理と企業再生
不良債権処理
債務処理の税務
相続税対策申告
路線価評価相続評価
物納と相続税調査
譲渡税買換特例
住宅税制住宅減税
固定資産税
税制改正
その他不動産税制
その他税制
相続対策と遺産分割
生命保険
その他不動産関連
その他
トピックス版・年別リスト
カネボウ劇場
発行元情報

バードレポート発行順
発行年順リスト
clip_blue_1.gif
clip_blue_3.gif