受遺者死亡の遺言書




子が先に亡くなった場合に遺言書は。財産は孫にいくのか。



2011年8月8日 第844号

子が先に亡くなった遺言書


95歳で亡くなったAさんは「長男に全財産を相続させる」との遺言書を残します。ただ財産を引き継ぐはずの長男はその3ケ月前に74歳で亡くなっています。

Aさん死亡時に長男は既にいなかったのです。Aさんの遺言書は有効でしょうか。長男には子つまりAさんの孫がいます。

このAさんには長男の他に長女がいます。長女は「すでに長男はいないのだからその遺言書は無効だ」と訴えます。


遺言書有効なら、長男に代わり(代襲して)孫がAさんの全財産相続です。遺言書無効なら遺言書なしですから遺産分割未了です。長女と孫が各法定相続分2分の1での遺産分割になります。

民法994条「遺贈は遺言者(Aさん)の死亡以前に受遺者が死亡したときはその効力を生じない 」とあります。遺贈なら無効で当然です。遺贈とは遺言書で財産を与える行為です。

Aさんの遺言書は「遺贈する」でなく「相続させる」と書かれています。微妙です。「相続させる」とは遺贈でなく「そのように相続手続きをしろ」との遺産分割方法指定と言われます。

東京地裁は、「相続させる」なのだから遺贈ではなく無効にはならない。Aさんは長男の血筋に承継させたかったのだろう、と長女側訴えを認めず遺言有効で財産は孫のものとなりました。

東京高裁は、「遺言は遺言者の死亡の時からその効力を生ずる(民法985条)」のだから効力発生時(Aさん死亡時)に長男が存在しなければ遺言は効力を生じないのが筋合い。遺言に長男死亡時の扱いが書かれていないのだから、孫が相続するとまで読むことはできない、と一転、長女の訴えが認められました。

最高裁2011.2.22.判決です。

長男に相続させるというこの遺言書は「遺言時における特定の推定相続人(長男)に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまると解され、…当該推定相続人の代襲者(孫)…に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り、その効力を生ずることはないと解するのが相当である。」長女の訴えどおり遺言無効です。

さて判決から遺言書作成時の注意事項が浮かび上がります。


あなたの遺言書は大丈夫?


「遺言書には…長男がAさんの死亡以前に死亡した場合に長男が承継すべきであった遺産を長男以外の者に承継させる意思を推知させる条項はない上…Aさんが(長男が先に死亡した)場合に遺産を承継する者についての考慮をしていなかった…」分かりやすい最高裁の判決文です。

「長男が自分より先に死んだなら孫に承継させる」と書いておけばそれは有効でした。

Aさんの遺言書作成は亡くなる13年前、長男61歳の時です。何が起こるか分かりませんから、「自分よりも先に死んだら」条項を遺言書に入れましょう。


多くの遺言書にそれは入っていないでしょう。「最高裁判決。あなたの遺言書は大丈夫ですか?」とアドバイスできます。

参考:「相続させる」遺言


「遺言」はそもそも「私の財産を誰に遺贈する」です。遺贈とは財産を与える行為です。

しかし実務は「誰に相続させる」と書きます。これは「与える行為」ではなく「遺産分割方法を指定する行為」とされます。つまり財産を誰のものにする遺産分割にしろと指定するのです。通常なら結果は一緒なのですが。

登記原因は「遺贈」でなく「相続」となり、他相続人協力不要で相続人単独での登記可能です。

以前は相続登記と遺贈登記とで登録免許税が4倍も違ったのです。節税目的で「相続させる」と遺言するのが普通でした。

ただ平成15年から「相続人に対する遺贈」なら登録免許税は同額になり節税メリットはなくなり、過去の名残りのようです。

なお遺贈だと、農地なら農地法上の許可が必要だったり、借地権や借家権なら賃貸人の承諾が必要だったりと、実務上の差があることもあります。



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