建物瑕疵の損害賠償




建物瑕疵は「現実」だけでなく「将来」の危険も損害賠償



2011年9月26日 第850号

1990年、RC造9階建てマンションを竣工後3ケ月でAさんは5億6200万円で買い取ります。

4年後にAさんは施工者に対し、建物亀裂や水漏れ等があるからと建て替えるか購入資金返還を請求し、その2年後1996年に設計施工者等に対し5億2500万円の損害賠償を求めます。

大分地裁を経て2004年の福岡高裁判決は構造耐力上で危険な状態ではなく不法行為責任は成立しないと請求を退けます。

ポイントは「不法行為責任」となるか否かです。

建物に問題があれば通常なら瑕疵担保責任です。これは直接の売主しか訴えられず、瑕疵の存在を知って1年で時効です。

不法行為責任なら被害救済制度であり直接の売主に限られず、設計施工者も対象にできます。そして損害を知って3年または不法行為のときから20年で時効。築20年まで対象になりえます。


欠陥建築の不法行為責任


2007年の最高裁判決は、建物が基本的な安全性を損なえば、設計施工者に賠償責任が生じるとして、福岡高裁判決を破棄、審理を同高裁に差し戻しました。

判決は…福岡高裁の判決は設計施工者等が不法行為責任を負うのは建物基礎躯体等に係わる社会公共的に許容し難い危険な建物になった場合と限定したが、「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」があれば不法行為責任が成立する。例えばバルコニー手すりは基礎や躯体ではないが、その瑕疵は通常使用で転落し生命身体が危険にさらされるじゃないか…といいます。

最高裁は基礎や躯体等限らず、欠陥建築については不法行為責任としての損害賠償の追及が可能だと認めたのです。

差し戻された福岡高裁は戸惑います。最高裁の言う「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」が不明確だったからです。

判決は…最高裁判決はバルコニーでも生命身体を危険にさらすと言っている。だから居住者等の生命身体財産への現実的な危険性を生じさせる場合であり、建物一部の剥落崩落で事故が起きそうな場合なら不法行為責任だろう。でも思うに、これまで長期間に渡り現実の事故が起きなかったのだから、そのような現実的な危険性は存在しないというべき。だから不法行為責任も損害賠償は認めない…。

「現実」と「将来」の危険


再度最高裁へ。2011年7月22日に2度目の最高裁判決です。

「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」とは現実的な危険をもたらしている場合に限らず、「これを放置するといずれは居住者等の生命、身体又は財産に対する危険が現実化することになる場合には、当該瑕疵は、建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵に該当する」

判決は…放置した場合に、鉄筋の腐食やコンクリートの耐力低下で建物の倒壊等に至る瑕疵はもちろんだけれども、外壁が剥落して通行人に落下、ベランダ階段での利用者転落で人身被害につながる危険、漏水等で利用者の健康財産が損なわれる危険があれば「建物としての基本的な安全性を損なう瑕疵」となる (建物美観や居住環境の快適さを損なうだけなら対象外) 。

現実的な危険に限らず将来の危険への損害賠償を認めるのです。現時点で問題なくとも、放置による外壁落下、ベランダ転落、漏水での危険ならそれだけで損害賠償の対象となります。

「将来の危険」つまり「手抜き工事したけどバレなくて現実的危機に至らなきゃ結果オーライ」は許さないぞとの判決です。


最高裁は再度福岡高裁に差戻しました。この損害を立証する責任は訴える側です。最高裁は訴えが可能なことは認めましたが、立証できるか否かは別です。

最高裁判決中の「いずれは」がいつなのかに不明。ベランダの手すりに力を加えて揺れるのは危険なのか。これも不明です。

ただ、設計施工業者等の心配事が増えたことだけは明白です。


(一部、日経アーキテクチャー2011.9.10を参照しています)



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