遺言信託で土地はこう売られた




遺言執行者が売却…遺言信託で土地はこのように売られた



2015年2月23日 第1014号

遺言執行者が不動産売却する


「被相続人(遺言者)は、遺言執行者(信託銀行)をして本件土地について換価処分させ、代金から経費を控除した残額を長男と次男に…の割合で遺贈する」といった公正証書遺言でした。

土地を売却してお金で分けます。執行者は信託銀行です。


「遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。(民法1012条)」…遺言執行者は不動産の売却権限を持ち、相続人に通知はしても、相続人の意向に従う必要はありません。

遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。(民法1013条)」…遺言執行者の意向に逆らい相続人が自分で売却してもその売買は無効になります。

売れた金額が相続税評価か


土地は100坪、路線価評価は1億円です。信託銀行(遺言執行者)が売主となり売却します。

平成20年10月遺言作成、21年1月相続。動きは早く2月仲介依頼、3月に売却6500万円。仲介は信託銀行不動産部でなく信託銀行依頼の(?)仲介会社のよう。

4月に買主不動産業者が3区画に分筆。その業者は5月までには3区画とも販売完了。

さて相続税。6500万円で売却の土地です。路線価評価額1億円ですが6500万円で申告します。

しかし税務署は1億円で課税処分。国税不服審判所で争います。

・税務署側によると…

(1)6500万円とは買主の希望する通りの価額、つまり言い値だった、(2)売主である信託銀行は瑕疵担保責任を負わず建物解体費等は買主負担の契約にした、(3)相続開始から2ケ月以内の売却となり売り急ぎ…だから6500万円は不特定多数間で決まる時価(客観的交換価値)でない。

よって評価は6500万円でなく路線価評価の1億円。そもそも公示価格と近隣取引事例による実勢価格は1億1800万円だ。

・納税者相続人側によると…

遺言により遺言執行者が売主として売却するので、相続人は売却に参加できず遺言執行者の処理に従うことしかできない。

自分の意思ではどうにもならないのだから実際に売れた6500万円が時価だ。売り急ぎでないし、開発用地なので安くなっても当然だと、鑑定評価書も用意して、6500万円だと主張します。

・国税不服審判所の判断…

仲介会社は数社に価格提示ナシで売込み、その買主が6500万円と言ったのでそうなった。

売却土地の利用状況、環境、地籍、形状等は公示地と全く同一で、開発用地に限定されない。

財産評価通達(路線価評価)により難い「特別の事情」はないから、路線価を使うべき。


だから税務署の処分は適法だ。

「6500万円で叩き売った」だけで、6500万円は時価ではないとの結論。なお審判所は時価を1億2500万円と認識しています。

特別の事情がなければ路線価評価です。「実質的な租税負担の公平を著しく害することが明らかな特別の事情(最高裁平成5年10月28日の原審)」がある時に限り、路線価によらない時価(鑑定評価)申告が認められます。

買主はわずか2ケ月で売り切ります。いい仕入れでした。

信託銀行もわずか2ケ月で売却作業を終わらせたのですから、いい仕事をしたのでしょう。ただ、売ることだけが仕事であり、高く売るための努力は仕事ではなかったようですが。

面積大き過ぎで6500万円だと相続人に事前説明はしています。

しかし「相続人は売却に参加できず、遺言執行者の処理に従うことしかできない」と相続人に言われています。つまり、いいように売られてしまった…と相続人は感じているのでしょう。

これが、その遺言信託でなければ、違う担当者なら、知り合い仲介業者に頼めて丁寧に売却できたなら…そうすれば違う売却になっていたかもしれません。

遺言信託に限らず、会ったばかりの遺言執行者に、条件も付けず売却まで一任すると、こんな結末になるかもしれません。

(国税不服審判所裁決 平成24年8月16日)


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