路線価無視を容認する国税通達




路線価無視を容認する国税通達…不良債権担保不動産の価格



バードレポート第242号1999年2月1日

「路線価無視」を認める通達


「適正評価手続に基づいて算定される債権及び不良債権担保不動産の価額の税務上の取扱いについて」という長い名前の通達が12月4日付で国税庁長官名でだされました。

  不良債権担保不動産の取引価格に関して、日本不動産鑑定協会が定めた方法に従えば、たとえ路線価や公示地価を無視したものでも、税務署はトヤカク言わない、という法令解釈です。

  鑑定協会の方法は昨秋に公表されたかなり大胆なものです。 その鑑定方法は、短期間転売目的で採算の合う価格を前提とし、当面の数年間の収益だけをもとにしての特殊な収益還元法によっています。

  通常の「収益還元法」は半永久的にその物件を所有する前提で価格を算出します。一方この方法は現状に基づく数年間の純収益と転売予測価格だけにより価格を算定し、その結果は極めて低い価格になります。当然に路線価や公示価格は無視です。

  鑑定協会の会員向けセミナー資料に事例が示されています。

土地140平方メートルRC9階建商業用ビルの事例は次の結果です。

1.積算価格  653000千円

2.収益価格  635471千円

3.鑑定評価額 261000千円

  積算価格とは、「土地が坪幾らで、建物が幾らだから合計で幾ら」として求めた金額です。収益価格とは短期転売をせずに不動産を所有し続ける場合の通常の収益還元価格です。両者を勘案して、正常価格を6.3億円としています。

  一方、早期処分のための鑑定評価額(特定価格)は2.6億円。 国税庁通達は、2.6億円で売買したとしても、それで税務上問題が無いことを認めたのです。 確かに税務上だけではありますが、お役所がこの2.6億円について不良債権担保不動産の取引価格として問題が無いものだとのお墨付きを与えたのです。

銀行の評価額とのギャップ


  銀行の不良債権処理は急ピッチ。貸倒見込額について引当済のものもかなり多いようです。 融資額が20億円で、担保不動産が前記不動産としましょう。 銀行サイドの不動産評価は正常価格6.3億円が基準になっていることが多いでしょう。融資額から担保不動産価格を差引いたものが通常は貸倒見込額です。 融資額との差額13.7億円を貸倒見込額として引当処理済とします。すると銀行サイドでの額面20億円の融資金の帳簿上の価額は6.3億円となっています。

  債務者が「6.3億円で任意売却します」と申出れば、銀行は予定どおりと、大喜びします。 しかし鑑定士さんが、国税庁のお墨付きまでもらって「実際に売却可能な鑑定評価額は2.6億円だ」と言えることになったのです。差額3.7億円をどう埋めたらいいのでしょうか。

  任意売却交渉時の「売り値」の交渉が今まで以上にややこしくなりそうです。 銀行が6.3億円と主張しても、6.3億円の買手は出現せず、ずっと安い買手しかいません。銀行は安く売るのはイヤだと言います。そこへ2.6億円のお墨付き鑑定評価書が登場するのです。 混乱の幕開けです 。

  しかし混乱はいずれ収束します。そして、この2.6億円が実際の売却可能価額として定着するとすれば、銀行の貸倒処理の不足額が3.7億円分膨らむことになります。銀行全体では一体どのくらい膨らむのでしょうか。

  この鑑定手法は1980年代の米国での金融危機の際の手法も参考にされているようです。米国ではこれにより処理が一気に進み、副産物としての「不動産証券化」も一気に進みました。

相続税評価額はどうなる


  国税庁ではこの鑑定手法が相続税評価に及ぶことを恐れているようです。 「この評価額は、不良債権担保不動産の取引価額として適正であっても、客観的な交換価値を示していないので相続税申告に際しては採用できない」の旨を国税庁担当官は言っています。

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