保証金債務と底地物納




定期借地の相続税の実際…保証金債務と底地物納に関連する資料・・・裁決書



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裁決書

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平成12年1月19日      ○○国税不服審判所長 ○○○○

審査請求人

住所 ○○市○○○丁目○番地
氏名 甲野 一郎
原処分庁  ○○税務署長


原処分  平成7年12月7日相続開始に係る相続税の更正の請求に対して平成9年12月8日付でされた更正をすべき理由がない旨の通知処分

上記審査請求について、次のとおり裁決する。

主文

審査請求を棄却する。



理由

1 事 実

 審査請求人(以下「請求人」という。)は、平成7年12月7日に死亡した甲野一夫(以下「被相続人」という。)の共同相続人の一人であるが、この相続(以下「本件相続」という。)開始に係る相続税(以下「本件相続税」という。)について、申告書に次表の「申告」欄のとおり記載して、法定申告期限までに申告(以下「本件申告」という。)し、次いで、平成9年4月9日に次表の「修正申告」欄のとおり修正申告をした。

 その後、請求人は、平成9年9月2日に課税価格及び納付すべき税額を次表の「更正の請求」欄のとおりとすべき旨の更正の請求(以下「本件更正の請求」という。)をした。

                             (単位 円)

  区分 項目 >  申  告        修正申告        更正の請求

課 税 価 格 >  

納付すべき税額 >  

 原処分庁は、これに対し、平成9年12月8日付で更正をすべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をした。
 請求人は、この処分を不服として、平成10年1月27日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年7月7日付で棄却の異議決定をした。
 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成10年8月5日に審査請求をした。

2 主 張

(1)請求人の主張 

原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。

 イ 被相続人が、○○○○、○○○○○及び○○○○○○と締結した定期借地権設定契約(以下「本件各定期借地権契約」という。)に基づき受領した各保証金(以下「本件各保証金」という。)の本件相続税の課税価格の計算上、債務控除すべき金額は、本件各保証金を年6%の複利現価率により算定した現在価値で申告したところであるが、次に掲げる理由から本件各保証金の全額とすべきであり、この点に関する本件更正の請求は認められるべきである。

(イ) 本件各定期借地権契約は、常時、何の拘束もなく、借地人の側から自由に解約が可能であることから、請求人は、常に本件各保証金全額の返済義務を負っている。
 したがって、本件各保証金の債務の額から控除すべき経済的利益は未確定のものであり、これを控除することは、未実現利益への課税にもなるため、本件各保証金の全額を債務控除の額とすべきである。

(ロ) 事実、請求人は、本件相続開始後、本件相続税を納付する目的で、本件各定期借地権契約の目的となっていた土地1筆(以下「本件売却土地」という。)を借地人と合意の上解除し、当該借地人に売却したが、その際、受領していた保証金の全額5,000,000円を譲渡代金の一部と相殺した。
 すなわち、相続税の課税価格の計算上、債務控除すべき金額の算定に当たっては、このような後発的な事情もすべて考慮すべきであり、このことは、大津地方裁判所平成9年6月23日判決(平成8年(行ウ)第3号相続税更正処分等取消請求事件)においても判示されている。
 なお、本件売却土地に係る譲渡所得の申告においても、収入金額の一部として本件売却土地に係る保証金の全額を計上している。

(ハ) 本件各保証金債務は長期無利息であるが、本件各保証金の経済的利益相当額は、本件各定期借地権契約の目的となっている土地の賃科の一部と相殺されるものであり、本件相続開始後の賃料収入に対応している経済的利益であるから、本件相続開始の時においては未実現であり、実質的に本件各保証金の債務の額から控除すべき経済的利益はない。

(ニ) 所得税の課税において、定期借地権の無利息保証金の経済的利益相当額を不動産所得として課税処理すること及び本件相続税の納付に当たり本件各定期借地権契約の目的となっている土地2筆(本件売却土地を除いたもの。)を物納申請(以下「本件物納申請」という。)した際に、○○国税局(以下「国税局」という。)から「保証金債務を清算した上で、保証金の授受のない賃科の改定」をするよう指示を受けたことは、いずれも上記請求人の主張と整合性をもつものである。
 そうすると、本件物納申請に対して国税局がそれらの保証金全額の清算を指示する一方で、原処分庁が本件各保証金全額の債務控除を認めないのは、課税と物納の整合性がとれておらず不合理である。

(ホ) 仮に、上記各主張が認められず、本件各保証金の債務の額を複利現価率を用いて算定するにしても、原処分庁が採用した利率は、平成6年当時に、最近10年の国債及び長期プライムレートを基準に示されたものであり、その後の低金利時代を反映しておらず、割引率の再計算が必要である。

(ヘ) 仮に、本件更正の請求が認められず、本件各保証金の債務の額を複利現価率を用いて算定した現在価値とするならば、本件売却土地に係る譲渡所得の収入金額について所得税法第36条((収入金額)))に基づく減額更正を求める。

ロ 本件更正の請求のその他の部分については、争わない。

(2)原処分庁の主張

 次のとおり、本件更正の請求には更正をすべき理由がないので、審査請求を棄却するとの裁決を求める。

イ 本件各定期借地権契約に係る公正証書(以下「本件各公正証書」という。)によれば、それぞれ次のとおり約定されている。

(イ)被相続人と借地人○○○○及び○○○○○○との定期借地権設定契約における定期借地権の存続期間はいずれも平成7年6月13日から51年間であり、同様に、借地人○○○○○との定期借地権設定契約における定期借地権の存続期間は平成7年4月21日から51年間であること。

(ロ)保証金には利息をつけないこと。

(ハ)本件各定期借地権契約終了時において、被相続人は、定期借地権の目的となっている土地を原状に復した上で完全な明渡しを受け、本件各保証金の残額があれば借地人に返還すること。

ロ 相続税の課税価格の計算上控除すべき債務の金額は、相続税法第22条((評価の原則))において、相続開始の時の現況による旨規定されており、相続開始の時において弁済期が到来していない金銭債務の価額について利息の定めがないときは、通常の利率による利息相当額の経済的利益を債務の元本から控除した金額により評価することとされており、具体的には、保証金の元本額に相続開始の時における定期借地権の返還期限までの期間に対応する年6%の複利現価率を乗じて算定した金額によることとしている。

 これを本件についてみると、上記イの事実から、本件各保証金はいずれも無利息であり、弁済期限も到来していないことから、次表のとおり評価することとなり、本件更正の請求の理由として請求人が主張する事項については、次のとおり理由がない。

                                (単位 円、年)

借地人>          @保証金の額 A残存期間 B複利現価率 C保証金の評価額(@×B)    

○○○○ >         5,000,000      50       0.054         270,000

○○○○○ >       5,O0O,000      50       0.054         270,000

○○○○○○  >  5,200,000      50       0.054         280,800

(イ)請求人は、本件各定期借地権契約は借地人の側から自由に解約が可能であって、常に本件各保証金全額の返済義務を負っており、本件各保証金の債務の額から控除すべき経済的利益は未確定のものであることから、本件各保証金の全額を債務控除すべきである旨主張するが、これは、借地人から本件各定期借地権契約が中途で解約された場合、すなわち定期借地権の残存期間が零となった場合であり、前提となる事実関係が異なる。

(ロ)請求人は、本件売却土地の譲渡代金の一部について、受領していた保証金5,000,000円の全額を本件売却土地に係る手付金5,000,000円と相殺したことから、このような後発的な事情も、本件各保証金の債務の額の算定上しんしゃくすべきである旨主張するが、これは本件各定期借地権契約が被相続人に係る本件相続開始後、相続人によって中途で解約された場合、すなわち本件相続開始後の請求人の任意の行為事情を主張するものであり、本件各保証金の債務の評価に影響を及ぽすものではない。
 また、請求人が後発的事情をしんしゃくすべきとして引用した判決は、財産評価基本通達において、同通達の定める評価によらないことが許される特別な事情の存否の判断の要素として、相続開始後の相続人の行為など主観的要素も考慮することが許される場合があると判断したものと解され、後発的な事情をすべて考慮しなくてはならないとしたものとは解されない。

(ハ)請求人は、本件各保証金の経済的利益相当額は、本件各定期借地権契約の目的となっている土地の賃料の一部と相殺されるものであり、控除すべき経済的利益はない旨主張するが、本件各保証金の債務は、不動産貸付において権利金の授受に代えて、賃貸人が賃借人から金銭を長期間無利息で借り受ける場合と何ら相違するものではなく、かつ、具体的な数的根拠をもって主張されたものではないことから理由がない。

(ニ)請求人は、本件各保証金について、課税と物納の整合性がとれていない旨主張するが、財産評価額の適否の問題と本件物納申請に係る土地の物納財産としての適格性の問題は別個の問題である。

(ホ)請求人は、仮に複利現価率により本件各保証金の債務の額を算定するにしても、年6%は、最近の低金利時代を反映しておらず、割引率の再計算が必要である旨主張するが、原処分庁の採用している利率は、長期プライムレート及び長期国債応募者利回りを基に算定された適正なものである。

(ヘ)請求人は、仮に本件更正の請求が認められない場合は、本件売却土地の譲渡所得について、減額更正を求める旨主張するが、請求人は、本件各保証金の債務の額を譲渡代金請求権の一部と相殺することにより、その譲渡代金の一部を受領したものであることから、減額更正をする理由がない。

3 判 断

本件相続税の課税価格の計算に当たり、債務控除すべき本件各保証金の債務の額について争いがあるので、以下審理する。

(1)次のことについては、請求人及び原処分庁の双方に争いはなく、当審判所の調査によっても、その事実が認められる。

イ 本件各定期借地権契約は、本件相続開始の時において存続しており、本件各公正証書において、次表のとおり定められているほか、本件各公正証書に共通して、@契約の不更新及び買取請求権の不行使等の特約、A保証金は無利息であること、B本件各定期借地権契約終了後に保証金の残額があればこれを借地人に返還すること及びC借地人は定期借地権存続期間中いつでも書面により解約を申し入れることができることなどが定められていること。

                                (単位 円)

借 地 人  >   所  在  地         借 地 期 間         保証金

○○○○ >       ○○県○○市○○        平成7年6月13日       5,000,000

>            ○丁目○番○          から51年間

○○○○○ >     ○○県○○市○○        平成7年4月21日       5,000,000

>        ○丁目○番○          から51年間

○○○○○○ >   ○○県○○市○○        平成7年6月13日       5,200,000

>        ○丁目○番○           から51年間

ロ 請求人は、本件申告に当たり、本件各定期借地権契約に基づく定期借地権の目的となっている土地の価額をそれぞれ次のとおり算定していること。

 なお、定期借地権の割合については、いずれも本件各保証金に係る経済的利益及びその存続期間を基として評定した定期借地権の価額が自用地としての価額の20%に満たないことから、20%として算定していること。

(イ)○○県○○市○○○丁目○番○
  自用地としての価額21,525,700円から定期借地権の割合20%を控除して、17,220,560円と算定している。

(ロ)○○県○○市○○○丁目○番○
  自用地としての価額22,195,000円から定期借地権の割合20%を控除して、17,756,560円と算定している。

(ハ)○○県○○市○○○丁目○番○
  自用地としての価額24,269,750円から定期借地権の割合20%を控除して、19,415,800円と算定している。

ハ 請求人は、本件各保証金の債務の額を、本件各保証金の額にそれぞれ課税時期における本件各定期借地権契約に基づく定期借地権の残存期間である50年に応ずる年6%の複利現価率0.054を乗じて、合計額820,800円と算定して本件申告をし、次いで、本件各保証金の債務の額を本件各保証金の全額である15,200,000円とする更正の請求をしたこと。

ニ 請求人は、平成8年8月2日に、本件相続税の納税資金ねん出のため、本件売却土地を借地人○○○○○に22,500,000円で譲渡したが、その際、手付金を本件売却土地に係る保証金と同額の5,000,000円とすることにより、譲渡代金の一部とその保証金を相殺して手付金の決済をしたこと。

ホ 国税局は、請求人の本件物納申請に対して、国は借地人へ返還となる保証金債務の引継ぎはできないとして、保証金を清算した上で、保証金の授受のない賃科の改定をするように指示したこと。

(2)債務控除の額について

イ 相続税法第11条の2((相続税の課税価格))、同法第13条((債務控除))及び同法第14条((控除すべき債務))によれば、相続税は、相続又は遺贈によって取得した財産の価額の合計額をもって課税価格とするが、相続開始の際被相続人の債務で確実と認められるものがあるときは、その金額を取得財産の価額から控除するものと規定している。そして、同法第22条((評価の原則))において、取得財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、また、取得財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況によるものとされている。
 これらの規定に微すれば、相続税は、財産の無償取得によって生じた経済的価値の増加に対して課される租税であるところから、その課税価格の算出に当たっては、取得財産と控除債務の双方についてそれぞれの現に有する経済的価値を客観的に評価した金額を基礎とするのであり、ただ、控除債務については、その性質上客観的な交換価値なるものがないため、交換価値を意味する「時価」に代えて、その「現況」により控除すべき金額を評価する旨定められているものと解される。
 したがって、控除債務が弁済すべき金額の確定している金銭債務の場合であっても、その金額が当然に当該債務の相続開始の時における経済価値を示すものとして課税価格算出の基礎となるものではなく、金銭債権についてその権利の具体的内容によって時価を評価するのと同様に、金銭債務についてもその利率や弁済期等の現況によって控除すべき金額を個別的に評価しなければならないのであり、かくして決定された控除すべき金額は、必ずしも常に当該債務の弁済すべき金額と一致するものではないと解される。

ロ ところで、相続税法第22条は、相続により取得した財産の価額は、特別の定めのあるものを除き、当該財産の取得の時における時価による旨規定しているところであるが、相続税の課税対象となる財産は多種多様であり、@時価を適正に把握することは必ずしも容易ではないこと、A納税者間で評価が個々に異なることは課税の公平の観点からいえば好ましいことではないことから、課税庁は事務の統一性を図るため、各種財産の時価の評価に関する原則及びその具体的評価方法を明らかにし、財産評価基本通達(昭和39年4月25日付直資56、ただし、平成8年5月30日課税2−3による改正前のものをいい、以下「評価通達」という。)を定めて、部内職員に示達するとともに、これらを公開することによって納税者の申告・納税の便に供していることが認められる。

ハ そこで、評価通達27−2((定期借地権等の評価))おいて、定期借地権等の価額は、原則として、課税時期において借地権者に帰属する経済的利益及びその存続期間を基として評定した価額によって評価するが、課税上弊害がない限り、自用地としての価額に、定期借地権割合及び定期借地権等の逓減率を乗ずることによって計算した金額によって評価することとし、定期借地権割合は、定期借地権設定時における借地人に帰属する経済的利益の総額をその宅地の通常の取引価格で除することによって算出し、定期借地権等の逓減率は、課税時期における定期借地権の残存期間年数に応ずる年6%の複利年金現価率を定期借地権の設定期間年数に応ずる年6%の複利年金現価率で除することによって算出することとしている。
 また、評価通達27-3((定期借地権の設定の時における借地権者に帰属する経済的利益の総額の計算))おいて、定期借地権等の設定に際し、借地権者から借地権設定者に対し、保証金、敷金などその名称のいかんを問わず借地契約の終了の時に返還を要するものとされる金銭等(以下「保証金等」という。)の預託があった場合、その保証金等につき年6%未満の利率による利息の支払があるとき又は無利息のときは、定期借地権等の設定の時における借地権者に帰属する経済的利益の総額は、保証金等の額から、保証金等返済の原資に相当する金額及び約定により支払利息が定められている場合は毎年の支払利息の額の総額を控除することにより算出するものとし、保証金等返済の原資に相当する金額は、保証金等の額に定期借地権等の設定期間年数に応じる年6%の複利現価率を乗じて算出することとしている。

ニ そうすると、上記(1)のイのとおり、本件各保証金は無利息で、本件相続開始の時において弁済期日が未到来の債務であることから、本件各保証金の債務の現況による評価額とは、上記ハのとおり、課税時期において、将来の弁済期まで通常の方法で運用すれば債務の弁済を行うに足る原資に相当する金額であると解されるところ、請求人は、上記(1)のハのように、本件各保証金の額にそれぞれ課税時期における本件各定期借地権契約に基づく定期借地権の残存期間に応ずる年6%の複利現価率を乗じて、本件各保証金の債務の額を適正に算定して本件申告をしていることが認められる。

(3)本件通知処分について

 納税者が更正の請求をする場合には、国税通則法第23条((更正の請求))及び国税通則法施行令第6条((更正の請求))によれば、更正の請求をする者が、まず、自ら記載した申告内容が真実に反するものであることを主張・立証すべきであると解されているところ、請求人は、本件更正の請求をする理由として、本件申告における本件各保証金の債務の額の算定は、以下に掲げる理由により誤りであるから、本件各保証金の債務の額を本件各保証金の全額15,200,000円とすべきである旨主張するので、それぞれ審理したところ、次のとおりである。

イ 請求人は、本件各定期借地権契約が借地人の側から常時自由に解約が可能であり、常に本件各保証金全額の返済義務を負っていることから、本件各保証金の債務の額は本件各保証金の全額とすべきである旨主張するので、以下審理する。

(イ)上記(2)のイのとおり、相続税の課税価格の計算上控除すべき債務の金額は、相続開始の時において現存し、確実な債務について、その時の現況により評価することとされている。

(ロ)これを本件各保証金についてみると、本件相続開始の時において現存し、確実と認められる債務は、上記(1)のイのとおり、本件相続開始の時に残存期間が50年である本件各定期借地権契約に基づき、本件各定期借地権契約終了時に本件各保証金の全額を返還することを内容とする債務である。

(ハ)そして、本件各公正証書に、借地人からの解約自由の条項が規定されている事実は認められるものの、本件相続開始の時において、借地人から解約の申出はなく、本件各定期借地権契約は存続しているという実態に基づいて、本件各保証金の債務の額を現況で評価するとき、借地人からの解約自由の条項は、控除すべき債務の額の算定に影響を与えるものではないと解するのが相当である。

 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

ロ 請求人は、本件売却土地の譲渡に際し、本件売却土地に係る保証金の全額5,000,000円を譲渡代金の一部である手付金5,000,000円と相殺したところであるが、相続税の課税価格の計算上、債務控除すべき金額の算定に当たっては、このような後発的な事情もすべて考慮すべきである旨主張するので、以下審理する。

(イ)相続財産の評価に当たっては、時価主義の原則からいってその財産の価額に影響を及ぽすべきすべての事情を考慮することと解されており、これは、債務の額を現況により評価する場合についても同様であると解されるが、所有者等の主観的要因や所有者等の意思、行為等により変更することができるような事情については、これを考慮すべきではないと解するのが相当である。

(ロ)これを本件についてみると、本件売却土地の譲渡は、上記(1)のニのとおり、本件相続開始後において本件相続税の納税資金をねん出するため、請求人が行った任意の行為であることが認められる。

 そして、請求人が納税資金をねん出するに当たっての手段の選択は、もっぱら請求人の側にゆだねられていることから、これらの事情を考慮せずとも実質的な課税の公平を失することにはならないものと認められる。

 したがって、本件について、上記(2)のニの方法により本件各保証金の債務の額を算定することにつき、これを適用できないとする特別な事情を認めることはできず、この点に関する請求人の主張には理由がない。

 ハ 請求人は、本件各保証金の経済的利益相当額は、本件各定期借地権契約の目的となっている土地の賃料の一部と相殺されるものであり、本件相続開始後の賃科収入に対応している経済的利益であるから、実質的に本件各保証金の額から控除すべき経済的利益はない旨主張するので、以下審理する。

(イ)上記(1)のイのとおり、本件各保証金は無利息であり、地主である請求人が享受する運用益相当額は、借地人にとっては前払地代の性格を有するものであり、借地人に帰属する経済的利益を構成するものと認められる。

(ロ)この借地人に帰属する経済的利益の額は、上記(2)のハのとおり、請求人から借地人に移転した定期借地権等の設定時における価額であると考えるのが相当であるから、本件各定期借地権契約の目的となっている土地の課税価格の算定においては、当該土地の自用地の価額から、当該経済的利益の額に基づいて算定された定期借地権等の価額を控除するとともに、当該経済的利益の額は、本件各保証金債務の額から本件各保証金返済の原資に相当する額を控除することによって算定されるものと認められるところ、請求人は、本件申告において、本件各定期借地権契約の目的となっている土地の価額については、上記(1)のロのとおり、評価通達27((貸宅地の評価))の(2)の規定に基づき、いずれも定期借地権割合を20%として自用地の価額から定期借地権の価額を控除するとともに、本件各保証金の債務の額については、本件各保証金の額に課税時期における本件各定期借地権契約に基づく定期借地権の残存期間に応ずる複利現価率を乗じてその現在価値を求め債務の額を算定しているところである。

 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

 ニ 請求人は、本件物納申請に対して、国税局の行った指示は、請求人の主張を裏付けるばかりでなく、原処分庁が本件各保証金全額の債務控除を認めないのは、課税と物納の整合性が取れでおらず不合理である旨主張するので、以下審理する。

(イ)相続税の課税は、相続による財産の取得という事実についてその財産的価値に担税力を認めて行われるものであり、一方、物納財産の管理又は処分の適否は、国が当該財産の管理又は処分により、金銭による納付があった場合と同等の経済的利益を将来現実に確保することができるという観点から判断されるのであって、ある相続財産について、それが課税価格の計算の基礎となった財産であっても、そのことから当該財産が物納財産として管理又は処分に適するということにはならず、管理又は処分をするのに不適当であるとされることもあり得ると解される。

(ロ)これを本件についてみると、上記(1)のホのとおり、本件物納申請に係る土地には、本件各保証金の債務があることから、管理又は処分に不適格として、その補正を指示したものであることが認められ、この指示は、本件各保証金の債務の額の算定に何ら影響を与えるものではないと認められる。

 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

ホ 請求人は、仮に、複利現価率により本件各保証金の債務の額を算定するにしても、年6%は、最近の低金利時代を反映しておらず、割引率の再計算が必要である旨主張するので、以下審理する。

 これについて、請求人は、本件更正の請求において具体的な利率に基づく主張をしていないことから、この点に関する請求人の主張には理由がない。

  なお、年6%は、課税庁が定期借地権等の評価方法等について定めた平成6年2月15日付課評2−2、課資1−2「財産評価基本通達の一都改正について」通達の制定当時において、過去10年間の長期プライムレート及び長期国債の応募者利回りの平均がおおむね6%であったことによるものとされているところ、以後、低金利傾向が続いているものの、本件相続開始の時においては、この低金利傾向が構造的に定着したものとは直ちに断言できないこと、また、課税庁が通常の利率として年6%を採用することとしてから、1年10か月余しか経過していないことも併せ考慮すると、年6%の複利現価率により本件各保証金の債務の額を算定したことは相当と認められる。

 へ さらに、請求人は、本件更正の請求が認められないのであれば、本件売却土地に係る譲渡所得の収入金額について所得税法第36条に基づく減額更正を求める旨主張するので、以下審理する。

 上記(1)のハのとおり、本件売却土地の譲渡は、本件相続開始後における請求人の任意の行為であり、本件各保証金の債務の額の算定に影響を与えるものではなく、また、請求人は、本件売却土地の譲渡において、本件売却土地に係る保証金債務5,000,000円と本件売却土地に係る譲渡代金の手付金相当額5,000,000円を相殺することにより譲渡代金の一部を決済しているのであるから、本件売却土地について5,000,000円の収入を得ていることは明らかであると認められる。

 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。

(4) 以上審理したところによれば、請求人の主張にはいずれも理由がないため、本件更正の請求について更正をすべき理由がないとした本件通知処分は適法である。

(5) その他

 原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

よって、主文のとおり裁決する。


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