保険会社営業社員と消費税




保険会社営業社員への消費税課税…2005年4月26日裁決



国税不服審判所2005年4月26日裁決

平17.4.26裁決
《裁決書(抄)》

1 事実
(1)事案の概要
 本件は、E生命保険会社の営業社員としての審査請求人(以下「請求人」という。)が消費税法上の事業者に該当するか否かを主な争点とする事案である。
(2)審査請求に至る経緯
イ 請求人は、平成12年1月1日から同年12月31日までの課税期間(以下「本件課税期間」という。)の消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)について、確定申告書に別表の「確定申告」欄のとおり記載して、平成15年1月17日に申告した(以下、この申告に係る申告書を「本件確定申告書」という。)。
ロ 原処分庁は、これに対し、平成15年2月20日付で別表の「賦課決定処分」欄のとおりの無申告加算税の賦課決定処分をした。
ハ その後、原処分庁は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」という。)の調査に基づき、E生命保険会社から支払を受けた報酬(以下「営業社員報酬」という。)が課税資産の譲渡等に当たるとして、平成15年12月18日付で本件課税期間に係る消費税等について、別表の「更正処分等」欄のとおりの更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び無申告加算税の賦課決定処分(以下「本件賦課決定処分」という。)をした。
ニ 請求人は、本件更正処分及び本件賦課決定処分を不服として、平成16年1月13日に異議申立てをしたところ、異議審理庁は、同年4月5日付で棄却の異議決定をした。
ホ 請求人は、異議決定を経た後の原処分に不服があるとして、平成16年5月3日に審査請求をした。
(3)関係法令等
イ 消費税法第2条《定義》第1項第3号は、個人事業者とは事業を行う個人をいう旨、同項第4号は、事業者とは個人事業者及び法人をいう旨、同項第8号は、資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいう旨、また、同項第9号は、課税資産の譲渡等とは、資産の譲渡等のうち、同法第6条《非課税》第1項の規定により消費税を課さないこととされるもの以外のものをいう旨規定している。
ロ 消費税法第4条《課税の対象》第1項は、国内において事業者が行った資産の譲渡等には、消費税を課する旨規定している。
ハ 消費税法第5条《納税義務者》第1項は、事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、消費税を納める義務がある旨規定している。
ニ 消費税法第28条《課税標準》第1項は、課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とする。)とする旨規定している。
ホ 消費税法第30条《仕入れに係る消費税額の控除》第1項は、事業者が、国内において課税仕入れを行った場合は、当該課税仕入れを行った日の属する課税期間の同法第45条《課税資産の譲渡等についての確定申告》第1項第2号に掲げる課税標準額に対する消費税額から、当該課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額を控除する旨規定している。
ヘ 消費税法第30条第7項は、同条第1項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ等の税額については、適用しない旨規定している。
 さらに、消費税法第30条第7項のただし書では、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない旨規定している。
ト 消費税法基本通達1−1−1<個人事業者と給与所得者の区分>は、次のとおり定めている。
(イ)事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいうから、個人が雇用契約又はこれに準ずる契約に基づき他の者に従属し、かつ、当該他の者の計算により行われる事業に役務を提供する場合は、事業に該当しないのであるから留意する。
(ロ)したがって、出来高払の給与を対価とする役務の提供は事業に該当せず、また、請負による報酬を対価とする役務の提供は事業に該当するが、支払を受けた役務の提供の対価が出来高払の給与であるか請負による報酬であるかの区分については、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく対価であるかどうかによるのであるから留意する。
(ハ)この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
A その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか。
B 役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか。
C まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても、当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか。
D 役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか。
チ 消費税法基本通達5−5−1<役務の提供の意義>は、消費税法第2条第1項第8号に規定する「役務の提供」とは、例えば、土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演、著述その他のサービスを提供することをいい、弁護士、公認会計士、税理士、作家、スポーツ選手、映画監督、棋士等によるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供もこれに含まれる旨定めている。
(4)基礎事実
 以下の事実は、請求人及び原処分庁の双方に争いがなく、当審判所の調査の結果によってもその事実が認められる。
イ 請求人の平成12年分の営業社員報酬の額は7,728,280円であり、当該報酬の内訳は、研修手当という名称で7,530,000円、通勤手当という名称で139,100円、諸手当という名称で8,000円及び保険料補助という名称で51,180円である。
ロ 請求人の平成12年分の営業社員報酬から控除されたノベルティ(贈答用として配付する証券を入れるケース、ロゴのついた計算機等をいう。以下同じ。)代金の額は、50,587円である。
ハ 請求人は、平成12年分の不動産貸付けが、課税資産の譲渡等に当たるとして、本件確定申告書の「課税標準額」欄に1,443,000円及び「控除対象仕入税額」欄に6,229円、それぞれ記載している。
ニ E生命保険会社の「営業社員雇用契約」と題する書類(以下、当該書類に記載されている契約を「本件契約」という。)、「営業社員の初期補給に関する規程」と題する書類(以下、当該書類に記載されている規程を「本件初期補給規程」という。)及び「営業社員就業規則」と題する書類(以下、当該書類に記載されている規則を「本件就業規則」という。)の書類の抜粋は、別紙1ないし別紙3のとおりである。

2 主張
(1)請求人
 原処分は、次の理由により違法であるから、その全部の取消しを求める。
イ 本件更正処分について
(イ)営業社員としての請求人は、次のとおり消費税法上の事業者には該当しない。
A E生命保険会社との本件契約に基づき労務の対価として請求人が支払を受けた営業社員報酬には、健康保険法、厚生年金保険法及び雇用保険法(以下、これらを併せて「社会保険関係各法」という。)の規定に基づき各社会保険料が課せられている。
 これら社会保険関係各法は、いずれも労働者及びその扶養者の生活の安定、福祉の向上を目的とするもので、その被保険者は適用事業所に使用される者、あるいは適用事業に雇用される労働者と定義しており、労働者でない自営業者等は、被保険者として加入することができないことになっている。
 このように、社会保険関係各法において、請求人は、事業者ではなく、労働者とされている。
B 営業社員や営業社員に類する一般の外交員は、地方税法第72条《事業税の納税義務者等》に規定する事業税の課税客体(第1種事業ないし第3種事業)として掲げる業種には含まれておらず、その報酬は課税対象とはなっていない。
 このように地方税法においても、請求人を事業者とはしていない。
C 以上のとおり、営業社員としての請求人が、一方では労働者又は使用人としての法律の適用を受け、他方、消費税法上の適用、取扱いにおいてのみ事業者であるという矛盾は、法治国家として認められない。
 まして、一般社会通念から見ても、営業社員や営業社員に類する一般の外交員を事業者と考えることは認知されていない。
(ロ)消費税法基本通達1−1−1の定めからしても、次のとおり、営業社員としての請求人は、事業者には該当しない。
A 本件契約第2条のとおり、請求人はE生命保険会社からの指揮・命令を受けるほか、実体的にも同社から保険募集の地域及び仕事のノルマ等の指示、監督を受けており、請求人はE生命保険会社に従属しているのであるから、請求人が独立して事業を行う者であるとはいえない。
B 本件契約第3条のとおり、営業社員報酬については、E生命保険会社の計算した金額が請求人に支払われるものであって、請求人が自ら計算し請求できるものではないことは明らかであるから、この面において、請求人はE生命保険会社に全く従属しており独立しているとはいえない。
C 原処分庁は、営業社員報酬について、本件契約に基づく支払の対価が給与であるか報酬であるかの区分が明らかでない旨主張するが、本件契約第3条のとおり、請求人の報酬を決定するのはE生命保険会社であり、請求人もそれを認めていることからその報酬が労務の対価であることは明らかである。
 また、原処分庁は、請求人は役務の提供を事業として反復、継続、独立して行っている旨主張するが、営業社員の仕事は反復、継続しているものの、上記A及びBのとおり独立しているとはいい難く、営業社員の仕事をもって事業とすることには無理がある。
(ハ)所得税法における事業の取扱いは、所得税法第27条《事業所得》の規定を受けた所得税法施行令第63条《事業の範囲》第1項第12号において、同項第1号ないし第11号に掲げるもののほか、対価を得て継続的に行う事業とする旨規定しているのみで、通達等での例示も無いことから、所得税法における事業の解釈は、消費税法よりも広く解されているものと考えられる。
 この点について、過去の経緯から、〔1〕旅費交通費、交際費等の自費負担の出費が多い営業社員に類する一般の外交員を給与所得者として給与所得控除で対応することは、所得税の負担の公平上問題があること、〔2〕給与所得に係る源泉徴収の年末調整制度の維持を図る必要があることから、給与所得控除を受ける対象から当該外交員を除き、所得税法施行令第63条第1項第12号にいう「対価を得て継続的に行う事業」に該当させたものと推察されており、したがって、所得税法は、政策的に事業の範囲を拡大解釈されたものであると考えられる。
 一方、消費税法基本通達5−5−1には、土木工事ほか、請負契約に係るサービス提供が15種類、弁護士等の知識・技能に基づく役務の提供が7種類と多くの業種が例示されていることから、消費税法第2条第1項第8号にいう「事業として」については、例示されている業種に限られるべきものと解すべきである。
 したがって、営業社員に類する一般の外交員については、消費税法基本通達5−5−1に記述がないことから、請求人の役務の提供が事業者としての役務の提供に該当すると判断するには無理がある。
(ニ)仮に営業社員としての請求人が消費税法上の事業者に当たるとしても、上記1の(4)のイのとおり、E生命保険会社からの平成12年分の営業社員報酬には、〔1〕通勤手当、〔2〕人間ドック受診料の奨励助成金である諸手当及び〔3〕営業社員がE生命保険会社の保険に加入した場合に、その保険料の一部を補助する保険料補助(以下、これらを併せて「通勤手当等」という。)が含まれている。
 そうすると、〔1〕これら通勤手当等は、明らかに実費弁償又は社員サービスとしての金銭補助であること及び〔2〕所得税法の源泉徴収の取扱いにおいて、その対象となるのは報酬、料金としての金銭に限られ、職務遂行上必要な旅費として、明らかに区分されているものは源泉徴収を要しないこととされていることから、当該通勤手当等の額については、課税資産の譲渡等の対価の額に含めるべきではない。
(ホ)さらに、上記1の(4)のロのノベルティ代金に含まれる消費税額については、E生命保険会社から交付を受けた月別の報酬明細(以下「本件報酬明細」という。)により証明でき、また、上記1の(4)のハの不動産貸付けにおける課税仕入れに係る消費税額についても、請求人のマンションの貸付けに係る不動産管理会社であるF社から交付を受けた月別の収支報告書(当該収支報告書と「本件報酬明細」と併せて、以下「本件報酬明細等」という。)により証明できるのだから、帳簿及び請求書等の有無にかかわらず、本件課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から、これらの課税仕入れに係る消費税額を控除すべきである。
ロ 本件賦課決定処分について
 上記イのとおり、本件更正処分はその全部を取り消すべきであるから、これに伴い、本件賦課決定処分もその全部を取り消すべきである。
(2)原処分庁
 原処分は、次の理由により適法に行われている。
イ 本件更正処分について
(イ)消費税法上の事業者について
A 原処分に係る調査及び異議申立てに係る調査(以下「異議調査」という。)によれば、次の事実が認められる。
(A)請求人は、平成11年8月1日付でE生命保険会社との間で本件契約を締結し,E生命保険会社G支社H営業所の営業社員として採用された。
(B)請求人は、平成11年分以降の各年分の所得税の確定申告において、営業社員報酬を事業所得の総収入金額、同報酬を得るために要した費用を必要経費として申告している。 
(C)E生命保険会社G支社H営業所長のJ所長は、異議調査を担当した職員(以下「異議調査担当職員」という。)に対し、要旨次のとおり申述している。
a 営業社員の職務の内容は生命保険商品の販売であり、E生命保険会社は契約までのプロセスを指導することはあるが、商品募集の相手、募集する地域及び募集する商品の種類の選択等の個々の業務については、同社からの指示はなく、営業社員自らの責任と判断で行っている。
b 営業社員としての職務を行うに当たっては、営業社員各自が自己の車両を使用し、その燃料費、自動車税、自動車保険等の車両関係費やそれ以外の職務を遂行する上で必要な費用は、営業社員各自が負担しており、E生命保険会社は営業所内の机、パソコン、プリンターを無償で貸与し、営業所内の電話を無料で使用させているだけで、営業社員の職務に必要な費用の実費負担及び補てんは行っていない。
c 営業社員は、月曜日及び木曜日にミーティングのため、E生命保険会社G支社に出社しなければならないが、それ以外の日は出社の必要はなく、生命保険商品の募集に係る勤務時間等は営業社員の判断で行われている。
d 営業社員報酬は、ライフプランナー報酬規程に定められており、初年度手数料(営業社員が販売した保険契約の第1保険年度分としてE生命保険会社が受領した保険料に応じて当該営業社員に支払う手数料をいう。)及び継続手数料(営業社員が販売した保険契約の第2保険年度以降分としてE生命保険会社が受領した保険料に応じて当該営業社員に支払う手数料をいう。)から構成されている。
B 営業社員としての請求人は、次の理由から消費税法上の事業者に当たる。
(A)消費税法第4条第1項は、課税の対象について、上記1の(3)のロのとおり規定しているところ、同法第2条第1項第4号は、事業者とは個人事業者及び法人をいう旨、また、同項第3号は、個人事業者とは事業を行う個人をいう旨規定している。
 また、消費税法第2条第1項第8号は、資産の譲渡等について、上記1の(3)のイのとおり規定している。
 したがって、個人が役務の提供をした場合に、その役務の提供が資産の譲渡等に該当するか否かは、その役務の提供が事業として対価を得て行われているかどうかによって判断することになる。
 そして、消費税法第2条第1項第8号にいう「事業として」について、消費税法基本通達5−1−1<事業としての意義>は、対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供が反復、継続、独立して行われることをいう旨定めている。
 また、個人事業者と給与所得者の区分について消費税法基本通達1−1−1は、上記1の(3)のトのとおり定めている。
(B)これを本件についてみると、請求人は、E生命保険会社との間で営業社員としての本件契約を締結しているが、当該契約に基づく支払の対価が給与であるか報酬であるかの区分が、明らかでないと認められる。
 したがって、上記1の(3)のトの(ハ)のAないしDの事項を総合勘案して判定すると、次のことから、請求人の受け取る役務の提供の対価は、給与ではなく報酬と判断され、請求人は、役務の提供を事業として反復、継続、独立して行い、自己の計算において独立して事業を行う者と認められるから、請求人の営業社員としての役務の提供は、事業者としての役務の提供に該当し、当該役務の提供の対価として受け取る報酬は、資産の譲渡等の対価の額に該当する。
a 上記Aの(C)のaの事実によれば、請求人の役務の提供の内容は、E生命保険会社の生命保険商品の募集、販売であり、その販売した保険契約の保険料に応じた手数料を報酬として受領するものであることを考慮すると、当該生命保険商品の募集、販売という役務の提供が、必ずしも請求人以外の営業社員の代替を容れないとは認められない。
b 上記Aの(A)並びにAの(C)のa及びcの各事実によれば、請求人とE生命保険会社との間には、営業社員としての本件契約は締結されているものの、生命保険商品の募集の相手、募集する地域、募集する商品の種類の選択、募集に当たっての勤務時間等の個々の業務について、同社から指揮監督を受けることはなく、請求人の責任において独立して行われている。
c 上記Aの(C)のdの事実によれば、営業社員報酬は、募集に要した時間等に関係なく、募集により成立した生命保険契約の保険料に応じて算定され、契約が成立しなければ営業社員報酬は支払われない。
d 上記Aの(B)及び(C)のbの各事実によれば、営業社員報酬を得るために生じた費用は、その大部分が請求人の負担であり、E生命保険会社からの補てんもない。
C 請求人の主張については、次のとおり、いずれも理由がない。
(A)上記Bで述べたとおり、請求人は営業社員としての役務の提供を事業として対価を得て行っていると認められるから、事業者に該当し、その営業社員報酬は出来高払の給与ではなく、事業としての役務の提供の対価であると認められるところ、営業社員報酬から各種の社会保険料が控除されているとしても、そのことにより当該報酬が出来高払の給与になるというものではなく、また、役務の提供が資産の譲渡等に該当するかどうかは、地方税法の規定から判断したものではなく、消費税法の規定から判断したものである。
 そして、一般社会通念から営業社員に類する一般の外交員を事業者と考えることは、認知されていないとの請求人の主張には、客観的、合理的な理由は認められず、請求人の営業社員としての役務の提供等の内容等を総合勘案すると、事業としての役務の提供に該当し、その営業社員報酬は、出来高払の給与でないことは既に述べたとおりである。
(B)消費税法第2条第1項第8号に規定する「役務の提供」について、消費税法基本通達5−5−1は、上記1の(3)のチのとおり定めているところ、同基本通達は、各種役務の提供のうち、いくつかを具体的に例示したものであり、同基本通達に営業社員に類する一般の外交員及びその報酬についての記述がないことをもって、営業社員の業務が消費税法第2条第1項第8号に規定する役務の提供に該当しないというものではない。
(ロ)通勤手当等について
 営業社員としての請求人が事業者に該当することは、上記(イ)で述べたとおりであり、事業者である請求人がE生命保険会社から受け取る営業社員としての業務に関する報酬とは、請求人がその業務の遂行に関連して同社から支払を受ける一切の金銭をいうのであるから、通勤手当等として受け取る金銭であっても、資産の譲渡等に該当する。
 このことは、請求人が平成12年分の所得税の確定申告書に添付した支払者をE生命保険会社とする「平成12年分報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の外交員報酬の支払金額に、当該通勤手当等が含まれていることからも明白である。
(ハ)仕入れに係る消費税額の控除について
A 消費税法第30条第1項及び同条第7項は上記1の(3)のホ及びヘのとおり規定している。
 そして、消費税法第30条第7項に規定する災害その他やむを得ない事情とは、天災や人為的災害で自己の責任によらない災害の場合や、このような災害に準ずるような状況又はその事業者の責めに帰することができないような状況にある事態をいうと解されている。
B 本件は、本件調査担当職員及び異議調査担当職員が課税仕入れに係る消費税額の確認のため、請求人に対して課税仕入れに係る消費税額の控除に係る帳簿及び請求書等の提示を求めたところ、同人からは、本件報酬明細等の提示はあったが、それ以外の支払に係る書類及び帳簿の提示はなく、その保存が確認できなかった。
 また、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかったことを請求人が証明した事実もなく、消費税法施行令第50条《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の保存期間等》第1項に規定する帳簿等の保存期間も経過していない。
 したがって、課税仕入れに係る消費税額の控除の適用はない。
 なお、請求人は、本件報酬明細等により、課税仕入れに係る消費税額の控除を認めるべきである旨主張するが、仮に本件報酬明細等が消費税法第30条第7項に規定する請求書等に該当するとしても、請求人からは課税仕入れに係る消費税額の控除に係る帳簿の提示はないのであるから、この点についての請求人の主張には理由がない。
(ニ)まとめ
 以上のことから、本件更正処分における消費税の課税標準額及び納付すべき消費税額等は別表の「更正処分等」欄のとおりとなる。
ロ 本件賦課決定処分について
(イ)本件更正処分により増加した納付すべき税額の計算の基礎となった事実には、国税通則法(以下「通則法」という。)第66条《無申告加算税》第2項に規定する無申告加算税を課さない場合の正当な理由があるとは認められない。
(ロ)無申告加算税の額は、通則法第66条第1項の規定に従い正しく計算されている。


3 判断
(1)本件更正処分について
イ 認定事実
 原処分関係資料及び当審判所の調査によれば、関係者は次のとおり、申述及び答述している事実が認められる。
(イ)請求人は、異議調査担当職員に対し、要旨次のとおり申述している。
A 請求人の平成12年当時の仕事の内容は、新規の保険契約を結ぶこと、顧客のアフターフォロー等である。
B 保険募集に当たっては、請求人の車両を使用しているが、その燃料費並びに当該車両の自動車税及び任意保険等のほか、鉄道運賃、飛行機代、高速道路料金、駐車料金及び宿泊代等の旅費交通費や顧客へのお祝い、顧客との食事代及びゴルフ代等の接待交際費等については、すべて請求人の自己負担である。
C 保険募集の地域の限定、保険募集の相手及び保険商品の適性等については請求人自身の判断で行うが、その経過、結果については、週1回、E生命保険会社G支社へ必ず報告する。
D 営業所外で営業活動を行う場合、請求人の自宅を出る時及び帰宅時のE生命保険会社G支社への連絡はしない。
(ロ)J所長は、異議調査担当職員に対し、E生命保険会社G支社にある机、パソコン、プリンターは無償で貸与しており、電話料金も無料である旨申述している。
(ハ)請求人は、当審判所に対し、帳簿は、E生命保険会社があっせんしてくれた記帳代行会社で作成してもらっていたが、その会社の専属税理士から帳簿を返してもらったかどうか記憶がなく、また、不動産貸付けに係る帳簿はない旨答述している。
(ニ)J所長は、当審判所に対し、要旨次のとおり答述している。
A 営業社員が月曜日と木曜日の週2回、E生命保険会社G支社へ出社することは、営業上の規則で義務とされているが、その対価としての報酬の支払はない。
B 上記Aの出社日には、支社、営業所それぞれにおいて、前週の業績発表、営業販売促進のための教育、研修、勉強会及び保険商品販売等の手続関係の打合せ等を行っている。

C 平成12年中の請求人の出社状況については、出勤簿を作成していないので分からない。
ロ 消費税法上の事業者について
(イ)請求人は、本件契約第2条及び第3条の定め等を根拠に、請求人はE生命保険会社に従属しており、また、同人の営業社員報酬を決定するのはE生命保険会社であることから、事業者でない旨主張する。
(ロ)ところで、上記1の(3)のハのとおり、消費税法第5条第1項は、事業者は課税資産の譲渡等につき消費税を納める義務がある旨規定している。
 また、事業者について、上記1の(3)のトのとおり、消費税法基本通達1−1−1は、事業者とは自己の計算において独立して事業を行う者をいう旨定めているところ、消費税法にいう事業者に関する当該基本通達の解釈については、請求人及び原処分庁とも争いはなく、当審判所においても相当と認められる。
(ハ)これを本件についてみると、次のとおりである。
A 本件契約第1条は、請求人の任務について、〔1〕E生命保険会社に定める保険種類の販売を行い契約を獲得すること、〔2〕集金した一切の金銭を管理し、何ら控除することなく、直ちにE生命保険会社に引き渡すこと、〔3〕専業の生命保険募集人としての仕事を行うこと及び〔4〕E生命保険会社の業務の維持、管理に関連して、契約者又はE生命保険会社の必要とする一切のサービス業務を行うことにある旨定めている。
 また、上記イの(イ)のAのとおり、請求人は異議調査担当職員に対し、請求人の仕事の内容は、新規の保険契約を結ぶこと、顧客のアフターフォロー等である旨申述している。
 さらに、保険業法第2条《定義》第17項は、生命保険募集人とは、生命保険会社の役員若しくは使用人等で、その生命保険会社のために保険契約の締結の代理又は媒介を行うものをいう旨規定している。
 そうすると、請求人の仕事は、E生命保険会社の生命保険募集人として、上記〔1〕ないし〔4〕を行うことにあると認められる。
B ところで、上記イの(ロ)のことから、E生命保険会社は、請求人の仕事のための費用の一部を負担しているものの、上記イの(イ)のBのことから、請求人は、仕事として保険種類の販売を行い、契約を獲得するに当たり、当該仕事の遂行上の主要な費用である保険募集に係る車両関係費、旅費交通費、接待交際費等の全額を負担していることが認められる。
C 確かに、上記イの(イ)のC及びD並びに上記イの(ニ)のことから、〔1〕請求人はE生命保険会社G支社への週2回の出社が義務づけられていること、〔2〕本件契約第2条には、営業社員の制限事項が定められていることに加え、〔3〕本件就業規則(別紙3)には、服務の原則等の規則が定められていることなどにおいては、請求人がE生命保険会社の指示、命令を受ける一面があることは否定できない。
 しかしながら、〔1〕については、E生命保険会社が請求人に対し出社を求めるのは、主として営業販売促進を図る目的で行われる打合せ等のためであり、〔2〕については、本件契約第2条が保険業法その他関係法令上の要請によるものと認められ、また、〔3〕については、単に、営業社員の服務及び労働条件について定めたものであるのに対し、請求人の主要な部分である保険募集の地域、保険募集の相手及び販売する保険商品の種類の選択等の保険契約獲得の手段等並びに月曜日及び木曜日以外の日の出社の要否、営業所外での就業時間の管理等については、請求人自身の責任と判断に委ねられているものと認められる。
D 以上のことからすると、営業社員としての請求人は、自己の計算においてその仕事を遂行するものであり、また、役務の提供につきE生命保険会社の一般的な指揮命令下にあるということはできないから、請求人は自己の計算において独立して事業を営む者であると解するのが相当である。
 したがって、E生命保険会社に従属しているという点に関する請求人の主張には理由がなく、また、本件初期補給規程第5条のとおり、E生命保険会社からの研修手当の額については、この業績評価額を基に算出されることが認められるところ、業績評価額は、請求人が販売した保険契約により会社が受領した保険料により計算されることから、営業社員報酬を決定するのはE生命保険会社であるという点に関する請求人の主張にも理由がない。
(ニ)なお、請求人は、社会保険関係各法及び地方税法において、請求人は事業者とされておらず、労働者又は使用人として法律の適用を受けるのに対し、消費税法上の適用、取扱いにおいてのみ営業社員としての請求人を事業者とすることは、社会保険関係各法や地方税法との間に矛盾が生じ、法治国家として認められず、まして、一般社会通念から見ても、営業社員や営業社員に類する一般の外交員を事業者と考えることは認知されていない旨主張する。
 しかしながら、営業社員や営業社員に類する一般の外交員を事業者と考えることが一般社会通念から認知されているかどうかは定かではないが、本件更正処分が違法か否かは、社会保険関係各法や地方税法の規定により判断するものではなく、あくまで消費税法の規定に従って判断すべきものであることから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ホ)さらに、請求人は、所得税法における事業は、政策的に消費税法よりも広く解されていることから、外交員は事業者でない旨、また、消費税法基本通達5−5−1には多くの業種が例示されていることから、消費税法第2条第1項第8号にいう「事業として」については、同基本通達に例示されている業種に限られるべきものと解すべきである旨主張する。
 しかしながら、消費税法の趣旨・目的が消費に広く負担を求めることであり、所得税法とは着目する担税力や課税対象を異にするものであることから、消費税法における「事業」の解釈と所得税法における「事業」の解釈の相違をそれぞれ関連付ける必然性は認められない。
 また、消費税法基本通達5−5−1は、消費税法第2条第1項第8号に規定する「役務の提供」について、その役務を提供する業種を例示したものであり、消費税法にいう事業について、その業種を定めたものではないことは明らかであることから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
(ヘ)上記(ハ)のとおり、営業社員としての請求人は、自己の計算において独立して事業を行う者であると認められるから、営業社員としての請求人は、消費税法上の事業者に該当する。
ハ 通勤手当等について
 請求人は、同人が平成12年分の営業社員報酬に含まれる通勤手当等については、明らかに実費弁償又は社員サービスとしての金銭補助であるから、課税資産の譲渡等の対価の額に含めるべきではない旨主張する。
 ところで、消費税法第28条第1項は、消費税の課税標準について、上記1の(3)のニのとおり規定しており、また、消費税法第2条第1項第9号は、課税資産の譲渡等について、上記1の(3)のイのとおり規定している。
 これを本件についてみると、上記ロで述べたとおり、営業社員としての請求人が消費税法上の事業者に該当することになり、同人がE生命保険会社から支払を受けた平成12年分の研修手当については、その全額が課税資産の譲渡等の対価の額になると認められる。

 そして、通勤手当等についても、請求人は研修手当とともに営業社員報酬の一部として支払を受けていることから、その全額が課税資産の譲渡等の対価の額に含まれると解するのが相当である。
 したがって、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 なお、請求人は、所得税法の取扱いにおいて、源泉徴収の対象となるのは報酬、料金としての金銭に限られ、職務遂行上必要な旅費として、明らかに区分されているものは源泉徴収を要しない旨主張するが、本件は消費税法の規定により判断すべきものであり、請求人のこの点に関する主張は適用法令を異にするものであって採用できない。
ニ 仕入れに係る消費税額の控除について
(イ)請求人は、ノベルティ代金に含まれる消費税額及び不動産貸付けにおける課税仕入れに係る消費税額については、本件報酬明細等により証明できるから、本件課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除すべきである旨主張する。
(ロ)ところで、事業者が、消費税法第30条第7項に規定する帳簿及び請求書等を整理し、これらを所定の期間及び場所において、同法第62条《当該職員の質問検査権》に基づく税務職員による検査に当たって適時にこれらを提示することが可能なように態勢を整えて保存していなかった場合は、同法第30条第7項にいう「事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等を保存しない場合」に当たり、同項ただし書にいう事業者が災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかったことを証明しない限り、当該保存がない課税仕入れ等の税額については、同条第1項の規定の適用はされないものと解されている。
(ハ)これを本件についてみると、〔1〕上記イの(ハ)のとおり、請求人は当審判所に対し、記帳代行会社の専属税理士から帳簿を返してもらったかどうか記憶がなく、また、不動産貸付けに係る帳簿はない旨答述していること及び審査請求書の「審査請求の理由」欄に本件調査担当職員が課税仕入れ等の税額に係る帳簿及び請求書等の提示を求めた際に記帳代行会社の専属税理士が関係書類を紛失して返却されていないために提示が不能であった旨記載があることから,本件調査担当職員から帳簿及び請求書等の提示を求められた際には、請求人は帳簿の提示が可能なような態勢を整えていなかったことがうかがえ、〔2〕請求人は本件報酬明細等を提示しているとしても、これは帳簿とは認められないことから、本件課税期間の課税仕入れ等の税額に係る帳簿を保存していなかったものと認められる。
 そうすると、本件の場合は、課税仕入れに係る消費税額について消費税法第30条第1項の規定の適用はない。 
 したがって、仮に本件報酬明細等により課税仕入れに係る消費税額が計算できたとしても、当該消費税額を本件課税期間に係る課税標準額に対する消費税額から控除することはできないから、この点に関する請求人の主張には理由がない。
 なお、上記イの(ハ)の答述はあるものの、請求人は帳簿及び請求書等を保存できなかったことにつきやむを得ない事情が存したことを証明せず、当審判所の調査の結果によってもそのような事情が存したとは認められない。
ホ まとめ
 以上のとおり、請求人の主張にはいずれも理由がなく、また営業社員としての請求人が消費税法上の事業者に該当するから、同人の平成12年分の営業社員報酬の全額が課税資産の譲渡等の対価の額に当たるとして行われた本件更正処分は適法である。
(2)本件賦課決定処分について
 上記(1)のとおり、本件更正処分は適法であり、また、同更正処分により納付すべき税額の計算の基礎となった事実が更正処分前の税額の計算の基礎とされなかったことについて、通則法第66条第2項に規定する正当な理由があるとは認められないから、同条第1項の規定に基づき行われた本件賦課決定処分は適法である。
(3)原処分のその他の部分については、請求人は争わず、当審判所に提出された証拠資料等によっても、これを不相当とする理由は認められない。

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