地主さんへ




嫌いなこと、理解できないことは絶対ダメ…どんな制度も最後は自己責任



全国賃貸住宅新聞1997年6月8日号 に掲載

●嫌いなこと、理解できないことは絶対ダメ…どんな制度も最後は自己責任

財産は自分で守るもの
 「私たちは今こそ、経済における二つの重大な原則、『ツケは必ず払われねばならない』、および『自分の大切な財産は自分で守るしかない』をかみしめるべき時にきている。」・・・・・・「爆発する郵貯と生保 浅井隆著 第二海援隊刊」より
日産生命が経営破綻しました。銀行破綻では一般個人は救われましたが、今回は一般契約者の被害は免れません。当初約束された契約内容の確保は不可能でしよう。
 「こんな高利回商品を信じていいのだろうか。でも保険会社は潰れないだろうし、最後は国が面倒みてくれるだろう。」と、大切な老後資金をつぎ込んでしまった人も救済されません。世の中のテーマは規制緩和です。規制がなくなり自由な社会になりますが、そこは自己責任の求められる社会です。「そんな保険会社を信じたあなたが悪い」と言われてしまう社会です。これは不動産の世界も同じです。

「言われるままに・・」
 借金苦の地主さんの相談が激増しています。ご相談を受けて思うのは、「地主さんには、何と無防備な人が多いのだろうか」です。
 「『無借金だから相続税が大変なんですよ。借金を増やしましょう。そのために賃貸マンションを建てましょう。借金を増やすのが目的だから、高くていいものにしましょう』と、営業マンが来て、相続税対策を勧めてくれたんです。熱心で親切なので言われるままに借金をして、言われるままに建築をしました。ところが家賃下落で返済不能となり、銀行には競売にかけるぞと言われています。営業マンは転勤して近くにはいません。」
 「こんなひどいプランを、あなたは何も考えず、誰にも相談せずに、ただ言われるままに実行したのですか?そもそも借金を増やすことを目的にするなんて間違いに決まっているじゃないですか。」
 「真面目そうな営業マンだったんです。まさかこんなことになるとは・・・。当時はバブルだったから仕方ないと思っていますが・・・。」
 「そうですねぇ・・・」と言って、借金清算のご相談を受けますが、心の中ではこう思っています。
「・・・バブル崩壊が原因ではなく、何も考えず、だれにも相談せず、他人まかせでこんなプランを実行したあなたが悪い。あなたの自己責任です・・・。」
 土地神話時代なら多少の失敗は地価上昇で補填もできましたが、今では一つの失敗で命取りです。

「ただほど高いものはない」
 地主さんとは不思議な方々です。10万円までのお金にはとても細かく、億円単位のお金にはとてもおおらかな人が多いようです。
専門家からアドバイスを受けるための数万円の経費をけちります。一方で、億円単位の不動産の話となると慣れない金額のせいなのか、言われるままです。
 そんな地主さん相手にビジネス展開するための仕組みがあります。「専門家による無料相談会」です。
そこにいけば、相談料の心配なしで、専門家からいろいろなアドバイスを受けることができます。うまく活用できればいいでしょう。
 ただしそこには「ただほど高いものはない」という構図もでき上がっています。専門家は無報酬で相談にのっているのではありません。専門家は「無料相談会」の主催者から報酬をもらいます。
 職業倫理を持つ専門家は決して嘘はつきません。しかし考え方で判断が分かれることはよくあります。そんな時には、「お客様」の利益になるようなアドバイスや誘導をしがちです。「こうしたらいいですよ」と。それはお客様から報酬をもらうためには当然のサービスとも言えます。こうして何億円が動き始めます。
 ここで、専門家にとっての「お客様」とは地主さんではなく報酬をいただく主催者のことです。

「何が目的で、何が手段か」
 賃貸マンションを建築する目的は何でしょうか。
 高収入で安全で効率のよい賃貸住宅経営をすることが「目的」です。建物を建築することはそのための「手段」です。建物を使って賃貸住宅経営をするのですから。
 さて、誰に相談しましょうか。
 「手段」の専門家にではなく、「目的」の専門家に相談しましょう。その分野の専門家は地元の賃貸管理業者です。
 「この地域ならばこの間取りがよくて、こう募集し管理して、家賃はこのくらい。建築費はいくらなら採算が合う。」「バストイレは一緒がいいか・別がいいか、2DKがいいか・広めの1LDKがいいか、宅配ロッカーは必要か、BSアンテナは、オートロックは・・・・・・」
 賃貸管理業は完成後の物件の管理受託が仕事です。甘い条件で物件の管理を引受けると、後で自分が苦しみます。また地元であれば転勤もなく地主さんから逃げられません。地主さんと一番近い立場にいるはずです。
 最初にやるべきことは賃貸住宅経営のプランをつくることです。その後でその「手段」となるべき建築プランを考えるのです。箱(建物)が先に決まっていて、その箱にあわせて中身(賃貸住宅経営)をいれるのではありません。中身にあわせた箱をつくるのです。
 また建築の「目的」が相続対策であるのなら、まず相続プラン、次に経営プラン、最後が建築プランの順番です。順番を間違えての失敗や破産がどれほど多いことか・・・。

「自己責任を忘れずに」
 特優賃を切り口にした建築営業が花盛りです。
 「特優賃は公的制度だから安心だ。」と言われますが、やっぱり最後は自己責任です。
 毎年5%ずつ家賃を値上げする特優賃のシステムなど、バブル時ではあるまいし、時代錯誤もはなはだしいと思いませんか。当初家賃は安いから満室でしょうが、そんな値上げを続ければいつか空き家になります。ずっと空き家になっても制度上では勝手な募集は許されませんし、20年間は特優賃制度から離脱できません。
 「一括借上だから安心」と言われても、経済実勢を無視した制度がいつまで続くはずもありません。確かに特優賃のメリットは大きく検討すべき制度です。ただし、公的制度だからいざとなっても救済されるとの幻想は捨てましょう。行政を頼る時代ではありません。
 特優賃での土地活用は、たとえ制度が破綻しても大丈夫との資金計画・経営計画・覚悟が必要です。
 「特優賃」をはじめ様々な土地活用制度があります。どんな制度も最後は自己責任です。失敗すれば「そんな制度を信じたあなたが悪い」のです。

最後は「好き嫌い」で
 嫌いなことはやめましょう。借金が嫌いなら借金をしてはいけません。理解できないこともやめましょう。定期借地権が理解できなければ定期借地権をやってはいけません。
 「他人がなんと言おうが、私はこうする。税金面では不利だが、不安が少ないし、最悪の事態になっても責任が取れる。私がこのプランを選んだのは、このプランが好きだからだ。損得の問題ではない。」
 十分検討した上で、最後は好き嫌いで決めたらいいでしょう。嫌いなこと分からないことばかりをすると、悩みと苦しみが増えて病気になります。早死にします。
 無理せず・苦労せず。地主業は気楽な気持ちでやれることが一番大切です。






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