進化する不動産




進化する不動産 第7回 収益還元



進化する不動産 住宅新報1998年10月9日から12月4日連載
第1回 証券化第2回 容積率移転第3回 自己責任第4回 効率経営第5回 貸し渋り第6回 建物第7回 収益還元

>住宅新報1998年10月16日号掲載

 収益物件の価格は収益還元が当然になってきました。
 あるアパートの年間収入は600万円。このアパートの価値すなわち売却価格はいくらになるでしょうか。買手が利回り6%は欲しいと考えるとそのアパートは1億円です。1億円に対しての600万円は利回り6%に相当するからです。利回り10%が欲しいなら年間家賃600万円での価格は6000万円になります。競売物件や老朽建物だと15%とか20%との声もききます。
 このような価格決定の考え方が「収益還元」です。収入と利回りから物件の価格を逆算して決めます。この考え方を突き詰めると、土地坪単価や建築費は何の意味もなくなります。いかに高価で素晴らしい土地建物でも、家賃収入が600万円で利回り6%ならば、価格は1億円になってしまうのですから。
 地主さんが時価1億円の土地に相続税対策として5千万円のアパートを全額借金で建築しました。家賃収入は年間600万円です。アパートを建築することで相続税は確かに減りました。しかし相応の相続税は生じます。そのために、やむを得ずこのアパートを売りに出しました。いくらで売れるでしょうか。
 家賃が600万円で利回りが6%ならこのアパートの土地建物の売却可能価格は1億円です。建築費の借金が5千万円残っていますから、その借金返済後の手取り金額はわずか5千万円。「こんなことなら相続税対策なんかやらなきゃよかった!!」
 土地1億円+建物5千万円=1億5千万円とはならないのです。原価が1億5千万円であっても、家賃が600万円なら1億円です。更地ならば相場の1億円で売れるでしょう。しかしその1億円の土地に建築費5千万円をつぎ込んだにもかかわらず、やはり1億円なのです。借金を返済するとわずか5千万円。アパート建築をしたばかりに5千万円損したのです。(この逆のこともありますが。)
 他業界では当たり前のことです。売れる金額は買主が買う金額です。原価の合計で商品が必ず売れれば経営の苦労はありません。ここに気がつかないのは官公庁関連業と地主業だけです。
 「相続税対策」とは財産の「価値」を下げないままで、「相続評価」だけを下げることをいいます。「価値」と「相続評価」の区別ができずに、売却予定資産の「価値」をわざわざ下げることは「相続税対策」と呼ばずに「愚か」といいます。
 バブルの頃は多少の「愚か」でも、地価と家賃の値上がりがカバーできました。しかし昨今のデフレ時代は失敗が許されません。不動産市場の変化と税制の締め付けにより、地主さんにとっての土地は有利な財産ではなくなっています。不利な財産でしょう。「相続評価」額はあっても、収益還元での「価値」ゼロの土地も続出です。
 大地主さんのご相談を受けると変化が感じられます。ご高齢のご当主は土地を守りますが、若いご当主からは土地に対するこだわりが薄れ、何がなんでも土地を守るという気迫は見えません。「土地から金融資産への組替え」という言葉への抵抗感も消えつつあります。
 ちなみにアメリカでは日本語の「土地有効活用」に相当する一般的言葉が存在しないようです。活用する意味のない土地にわざわざ借金で「土地有効活用」をすることもないようです。
  余った土地はその土地を活用する力のあるプロの手に渡り、社会が喜ぶように活用されるのでしょう。


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