トピックス20020808




毛利元就に見る相続対策の是非・・・相続における会社株式の分割方法・・・ATO通信14.7.29号



バードレポート・トピックス版 2002.8.8.

毛利元就に見る相続対策の是非・・・相続における会社株式の分割方法
ATO通信14.7.29

税理士法人ATO財産相談室の阿藤芳明税理士にお願いし、同社発行ATO通信を転載させて頂きました。  同社は、http://www.ato-zaiso.net/をご覧下さい。ご相談等は同社03-5468-6700までどうぞ。


毛利元就と言えば、『3本の矢』の話があまりに有名。1人では不足でも、兄弟3人力を合わせれば、強力になることを3本の矢に例えて協力せよとの教えです。この教え、一般論としては勿論疑いのない真実でも、相続対策として見た時は、実はちょっと気に掛かることもあるのです。

とりわけ、上場していない会社の株式を、子のうち誰が相続するか、誰が経営権を握るかは、3本の矢ほど純粋な協力論だけでは片づきません。大所高所からではなく、世間によくある実例(お客様のご了解済み)から税務の立場で検討してみることにしましょう。

1.不採算部門の切り離し


Kさんは自動車整備工場に併設して、ガソリンスタンドを経営しています。二人の息子のうち、長男が整備を次男がスタンドを担当しています。整備部門はそこそこの利益が維持できるものの、ご多分に漏れずスタンド経営は非常に厳しい状況です。スタンドの赤字を整備で埋めているのが実態と言ってもいいでしょう。Kさんが全株式を持っていますが、将来の相続を考えると心配なことが二つあります。

一つはKさん亡き後、二人が本当に協力しあって会社を盛り立てていけるか、とりわけスタンドは整備部門にオンブにダッコの状況です。もう一点は事業規模に比較して会社保有の賃貸不動産がかなりあり、株価が評価上はかなり高額となる相続税法上の心配です。

このケース、税務上の見地だけから見た場合はその解決策もいたって簡単。採算の悪いスタンドは閉鎖です。道路沿いで立地も良いことから、貸店舗とすればかなりの家賃収入が見込めます。その上で整備と賃貸の両部門を会社分割の手法で別会社に。税法上の要件はありますが、昨今は大きな税負担もなく2社への分割が可能なのです。

ただ、株式は従前通り両社とも全株を現社長が保有することが条件です。そして、万一の時は整備会社を長男、賃貸不動産会社を次男が相続し、それぞれが独立して経営を掌握していけばよいのです。また、ここでは詳述いたしませんが、会社分割により全体としての株価の引き下げも可能なのです。

実際にはこのプラン、次男が大反対で宙に浮いたままの状態です。長年手塩にかけてきたスタンドを閉鎖し、従業員を解雇するのは身を切るよりも辛いというのが理由です。仮に閉鎖はしなくても、整備と切り離されれば経営上は早晩衰退も目に見えているのです。次男の気持ちも分かります。

理屈としては理解できても、現実の閉鎖は気持ちの上ではそれ程容易ではありません。ただ実際の相続税額を直視してみればこのままで良いはずはありません。しばし時間が必要と言うことでしょうか?

2.株式は集中、原則通りの分割に見る美談!


Fさんは80歳の高齢ながら、建設資材製造業を営む現役の社長です。将来の相続をも視野に入れ、自社株式を後継者たる息子に贈与を繰り返し、凡そ1/3程を移転済みの状況でした。そんなある日、息子が急死してしまったのです。息子夫婦には子が無く、相続人は妻とFさんら両親の計3人。Fさんの援助もあり、息子にも上記株式の他、それなりの蓄財ができてはいました。

ただ、将来を託していた子を亡くしたFさんの悲しみは、想像するだに胸を締め付けられるものがあります。そんな中、財産の分割について、Fさんは毅然とした態度で息子の嫁にこう言ったのです。『息子亡き後、お前が経済的に困らないよう、親として会社として、最大限のことはさせて貰う。不動産はじめ預金に至るまで私達は何ら相続するつもりなどない。但し、株式だけは社長として私が相続したい。』と。これでいいのです。

いや、会社の社長としては、本来こうしなければならないのです。株式は絶対に分散させてはならないのです。娘婿も会社経営に従事しており、息子に子が無い以上、ひとまずF家に集中させ、徒に分散させないことが肝要です。表面的な公平など無用です。また、お嫁さんとて経営に興味もなく株式など関心外。現実面で今後の生活を配慮してくれるFさんに対し、感謝の気持ちは大きいことでしょう。

もとより兄弟は力を合わせて協力すべきです。が、会社経営はそれ程単純ではなく、兄弟は他人の始まりくらいの認識で当たるべきもの。権力と株式は集中させた方がうまくいく事が多いのかも知れません。

3本の矢も元就の真意は協力の勧めではなく、毛利家衰退の危機に対する警鐘であったとか。両雄並び立たず、寂しくとも、辛くとも、トップは一人で奮闘、決断すべきなのです。

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